<<前のページ | 次のページ>>

いろいろな木道 群馬県片品村・至仏山

撮影年月日:1999年7月21日

 ひとことで「木道」といっても、場所によって様々な形態がある。ここでは広義の木道に含まれる木製桟道と合わせて、私が過去に撮影した中から、木道関連写真を拾って並べてみた。

 ところで木道や桟道が設置してある場所といえば湿原だが、訪問者が歩きやすいようにという意図で普通の登山道や遊歩道にも設置されることがよくある。確かに訪問者からすると木道がある方がはるかに歩きやすいし、特に湿原の場合は、踏み荒らしを防ぐ重要な役目もある。こうした行政の取り組みは大変結構なことだが、その反面、ケースによってはデメリットもある。

 みなさんも、濡れた木道で滑って転んだり転びそうになった経験が一度くらいはあると思う。それでも通常は乾くと再び滑りにくくなるが、林間のジメジメした場所だと雨で濡れても乾きにくく、それが継続することで、やがて表面にぬめりが出てきて、さらに滑りやすくなる。

 私は過去の取材で、やはり林間に設置された傾斜した木道で滑って転び、頭部や足を強打し出血したことがある。木道は滑りやすいことは経験上重々承知していたので慎重に足を置いたつもりだが、滑りやすさは想像以上だった。足を置いた瞬間につるっと滑った。持っていたカメラが壊れなかったのは幸いだったし、出血もわずかだったが、私が滑って転ぶということは、ほかの訪問者でも同じ事態になる可能性が高いことになる。もちろん、その時の木道表面の濡れ具合にもよるだろうが、これは危険だと思った。高齢者でなくても、転んだ時に岩で頭を打てば笑い話ではすまない。

 山には危険が付き物で、何かがあっても自己責任というのは、ある意味正しいが、それは相手が自然の場合であって、滑りやすい木道は人為的に設置されたものであり、滑り止めを付けて防止することは可能なはずだ。滑りやすい木道を未対策のまま設置しておきながら、滑って転んで怪我をしたのは転んだ人の自己責任かというと違うだろう。予算云々はあろうが、滑りやすい木道を設置するくらいなら、むしろ、何も置かない通常の登山道のままにする方がマシである。

関連情報→本サイト山岳記「いろいろな道



泥を被った木道も足の置き方には注意する必要がある。状況次第で滑ることも。至仏山登山道で。



志賀高原の、ややマイナーコースで見かけた木道。表面は濡れて落ち葉が覆い、縁は苔むし、滑り止めもなく、いかにも滑りそうな雰囲気にあふれていた。さすがに普通に歩く気にならず、四つん這いになって、そろそろと通過した。撮影は2023年。



スリップ防止のために一定の間隔で横木を渡した木道。これなら仮に滑っても、横木間だけですみそうだが、木道工事の手間は倍増しそうだ。苗場山で。撮影は2000年。



その苗場山の木道に取り付けられていた木道工事の国立公園整備事業票。環境省による事業だが、施行は長野県が行ったようだ。こうした事業票は、木道ごとに必ずあるわけではない。撮影は2017年。



谷川岳の天神尾根登山道にも一部、同様の横木を渡した木道があった。撮影は1998年。



立山の松尾峠に続く登山道では、木道に細い溝を彫り込む方式によるスリップ防止加工がされていた。おそらく横木方式の方がスリップ防止効果は高いだろうが、設置者の配慮に感謝したいところだ。撮影は2008年。



乗鞍高原の女小屋の森にのびる桟道表面には金網が敷かれ固定されていた。これなら確かに滑りにくい。林間の桟道はどうしても湿っぽくなり、表面に苔や藻類、菌類が繁殖して滑りやすくなる。なので、こうした対策は大変有効といえるだろう。訪問者からクレームがあって後付けしたのかもしれないが、どちらにしてもベストな方法だと思う。撮影は2023年。



複線の木道に柵まで整備。手間とお金がかかっていることを伺わせるが、それだけ快適な散策ができる。岩手県八幡平市・八幡平で。撮影は2002年。



片側だけに重厚な柵が付けられた木道。これほど立派な柵であれば、撮影時には三脚代わりにもなりそうだね。秋田県大館市・芝谷地。撮影は2002年。



新設されたばかりの複線木道。左側に写っている木道が旧来のものだが、木材を湿原上に敷くだけだと、特に夏場は木材が太陽の熱で温められて、湿原の乾燥化に拍車をかけたり、水の流れに影響を与えたりと、マイナス面も指摘されている。この場合はどんな理由で、支柱方式が採用されたのか不明だが、支柱で木道と湿原の間を空けることで、影響を少なくできるのも間違いない。工事直後で、まだ関連資材が置きっぱなしになっていた。尾瀬ヶ原で。撮影は2001年。

NEW

湿原環境に影響が少ない構造の木道に再整備したことを説明する長野県白馬村・親海湿原(およみしつげん)の解説板。以前の木道は、湿原表面に板を置いただけの敷板木道だったため、湿原内の水の流れを遮断していたが、木道を高くすることで水の流れが戻ったとある。しかも動植物への影響を少なくするため、積雪期に工事をしたという。大変結構なことだ。撮影は2005年。

NEW

湿原入口に山と積まれた木道部材。木道はどうしても腐食するので、時々付け替える必要があり、その際は大量の木材が必要になる。コンクリートや樹脂でも代用はできるだろうが、やはり風情という意味では木材に代わるものはないだろう。北アルプス・立山の弥陀ヶ原で。撮影は2008年。



木道工事に際して登山者に注意喚起するため設置された看板。新潟県魚沼市・平ヶ岳の中ノ岐林道入口で。この工事では、ヘリコプターで古い木道は搬出されてチップとして再利用される予定のようだ。撮影は2016年。



木道ではないが、戦場ヶ原に新設されたばかりのテラス。これほどの構造物を設置するのに湿原を踏まずしてできるはずもないから仕方ないが、テラス周囲は踏み荒らされ、ほぼ植生は消えていた。その後、植生は再生していたが、こうした構造物が湿原生態系に及ぼす影響について、いずれ検証する必要があるだろうね。撮影は2000年。



戦場ヶ原で見かけたフロート(浮き)付きの木道。フロートがなければ沈むってこと? 撮影は1998年。



これもある意味、木道である。丸木を組んで、中に現場の石を集めて詰めてあった。滑りにくいので、こうした方式もいいと思う。秋田県仙北市・笹森山。撮影は2002年。



朽ちかけている木道(右)と、更新された木道(左)。周囲を彩るのはキンコウカ。平ヶ岳の木道工事のように本当は朽ちかけの木道は、そのままにするのではなく回収して処分する方がベストだろうけどね。福島県舘岩村(現・南会津町)・田代山。撮影は1999年。



普通の登山道に枕木のような木を並べた道。山には、こういう道って割とあるんだよね。すべてではないが、横木を渡してあった。群馬県草津町・草津白根山。撮影は1999年。



極めて立派な桟道。ここまでしなくてもいいんじゃないかという意見もありそうだが、確かに歩きやすかった。というか、ここだけ山の登山道というよりも公園の遊歩道を歩いているようだった。相当にお金がかかっているだろうな。奈良県上北山村・大台ヶ原。撮影は2001年。



遊水地に整備された幅広の桟道。植物観察や撮影する際に桟道が広いと、ほかの通行者に気を遣わなくてすむので助かる。神奈川県藤沢市・大庭遊水地。撮影は1998年。



 CONTENTS 
 
   
 

Nature
山岳記