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山のいで湯 大分県竹田市・くじゅう連山 法華院温泉ほか

撮影年月日:2013年8月28日ほか

 景色だけでなく、温泉が多いのも山の魅力。登山のあとに浸かる温泉ほど、言葉にできないほどの至福のひとときはない。なので登山と温泉は、抜群の相性といえる。私は取材を通して、北は北海道・利尻礼文、南は鹿児島県・屋久島に至るまで立ち寄り湯も含めて過去に相当な数の山のいで湯に浸かってきた。

 「山のいで湯」といっても施設ごとに様々。山岳地にある温泉は、すべて「山のいで湯」といえるが、立地条件として①車で施設前まで直接アクセスできる温泉。②車で行けるが、最寄りの駐車場に置いて、少し歩く必要がある温泉。③車では行けず徒歩で行くしかない温泉に分けられる。さらにいずれの場合も温泉旅館、温泉ホテル、温泉付き山小屋、立ち寄り湯専用の4通りがある。旅館か山小屋かの違いは、前者が基本個室。後者は基本相部屋ということになろうか。

 また山のいで湯には「秘湯」という形容が似合う宿も多い。具体的には日本秘湯を守る会会員の宿がそれに当たる。同会サイトのリストを見ると、確かに有名な秘湯の名前が並んでいる。古びた木造の日本家屋で、いかにも秘湯といった趣の山のいで湯は、東北地方に多く、実に風情がいい。本当に昔ながらの秘湯には、浴室にカラン(水栓金具)さえないところもある。一泊すれば、いい経験になろう。

 ちなみに山の秘湯として、私の中で真っ先に頭に浮かぶのが、栃木県・那須連山にある三斗小屋温泉。秋に友人2人と那須連山縦走の際に利用したのだが、大変印象深い山旅になった。那須連山は、どこも美しく、まさに秘湯中の秘湯といえる三斗小屋温泉の宿泊も、とてもよかった。普通は山小屋が建っているような完全な山の中にあるが、2軒の宿はどちらも山小屋ではなく温泉旅館。茶臼岳から半日歩いて宿に到着。宿の上にある展望台に上がると、夕日が会津の峰々に沈むところだった。その光景を眺めていると、宿の人が上がってきて「お客さんは幸運ですよ。夕日が見れるのは15日ぶりですから」と仰っていた。

 その一方で私にとって取材時の山のいで湯は、単に「汗を流す場所」だったりもする。特に夏場は、仕事を終えたあとに立ち寄り湯に入って、さっぱりしたくなる。先にも書いたように過去に入浴した全国各地の温泉は相当な数になるが、エリアごとに決まったお気に入り施設があって、毎回同じ施設ですませることが多い。おそらく最も利用回数が多いのは、新潟県妙高市・杉野沢温泉の苗名の湯だと思う。



くじゅう連山・坊ヶツルにある法華院温泉山荘。平治岳や大船山など、くじゅうの峰々に囲まれた盆地にある。徒歩でしか行けない九州を代表する山のいで湯。2013年撮影。



北海道新得町。大雪山系のトムラウシ温泉・国民宿舎東大雪荘。道道なのに未舗装区間も長いアクセス道路のはてに立派な建物が出現して、その落差に唖然とさせられる。トムラウシ登山では通常はさらに林道を7キロ奥に入ったトムラウシ短縮登山口を利用するが、ここからも登山道がのびている。2013年撮影。



北海道ニセコ町。ニセコ高原にある五色温泉。立ち寄り湯で何度か利用した。2013年撮影。



青森県十和田市の蔦温泉旅館。大町桂月ゆかりの温泉宿で、隣接する蔦野鳥の森も素晴らしい。2008年撮影。



秋田県仙北市・乳頭温泉郷の鶴の湯温泉。乳白色の湯が特徴。乳頭山に抱かれた、まさに秘湯。2008年撮影。



山形県米沢市・大平温泉滝見屋。吾妻連峰の深い渓谷に建つ一軒宿。狭い未舗装林道終点に車を置き、そこから徒歩15分。2003年撮影。



宮城県栗原市・栗駒温泉郷の駒の湯。2008年の岩手宮城内陸地震で発生した土石流によって宿は流され、オーナー家族と従業員、宿泊客の計7名もの死者が出た。写真は地震発生の3年前に撮影。それ以前にも何度か利用しているが、この時は改築直後で外観も中もきれいだったことを覚えている。2015年に立ち寄り湯専用施設として復活されたようだ。



福島県南会津町(撮影時は伊南村)。古い湯治場のような雰囲気がある古町温泉・赤岩荘の浴室。施設にも写っている人にも許可を得て2001年に撮影。



同じく福島県南会津町(撮影時は舘岩村)。湯ノ花温泉・湯端の湯の浴室。主に地元の人が日常的に利用する素朴な共同浴場。撮影は2001年。湯ノ花温泉には、ほかにも弘法の湯、天神の湯、石湯の共同浴場がある。



栃木県日光市・奥鬼怒温泉郷の日光澤温泉。女夫渕温泉(当時はホテルがあったが、現在はない)の市営駐車場から徒歩2時間20分もかかるが、昔ながらの風情が秘湯という形容に似合う。鬼怒沼湿原登山コースの途中にある。1999年撮影。



群馬県松井田町・霧積温泉の霧積館。2012年に閉鎖されたが、写真はその2年前に撮影したもの。もう1軒の宿・金湯館は営業しているが、駐車場から徒歩で向かう必要がある(所要約30分)。



新潟県糸魚川市・雨飾温泉雨飾山荘。雨飾山の新潟県側登山口にある。2016年撮影。



新潟県糸魚川市・白馬岳蓮華温泉ロッジ。北アルプス・白馬大池や白馬岳の新潟県側登山口に建ち、野趣満点の露天風呂が魅力。2015年撮影。



蓮華温泉の露天風呂のひとつ薬師の湯。撮影は同ロッジに宿泊した1991年。



新潟県妙高市。燕温泉の無料露天風呂・河原の湯。燕温泉駐車場から徒歩15分。ほかに黄金の湯という露天風呂も近くにある。2017年撮影。



山梨県韮崎市・青木鉱泉。南アルプスに抱かれた一軒宿。撮影は2009年。



1995年5月に単独行で鳳凰三山を縦走し、最後に青木鉱泉で一泊。その際に撮影した浴室。地蔵ヶ岳からの下山は時間がかかり、夕刻になってようやく青木鉱泉に到着。その日、宿泊客は私一人。予約してあったので、宿の人から「遅いので心配してましたよ」と声をかけて頂く。すぐにお風呂に浸かって山旅の疲れを癒した。



新潟県湯沢町。苗場山山中に建つ赤湯温泉・山口館の露天風呂。温泉旅館ではなく温泉付きの山小屋。1991年に祓川コースで苗場山へ登り、赤湯コースで下山して一泊した。宿でタクシーの手配を依頼し、翌日、タクシーが入れる林道出合まで徒歩2時間半。到着すると、すでにタクシーが待ってくれていた。



長野県小諸市・天狗温泉浅間山荘の浴室。赤褐色の湯が特徴。浅間山や湯の平高原の登山口。撮影は2006年。



長野県松本市。北アルプスの景勝地、上高地にある上高地温泉ホテル。文政13年(1830)から続く歴史があり、ウェストン夫妻も宿泊した



岐阜県下呂市。御嶽山中腹にある濁河温泉の市営露天風呂。何度も利用した立ち寄り湯。撮影は2015年。



富山県立山町。北アルプス・立山の室堂平に建つ日本で最も高い場所にある温泉。標高は2410m。




■全国各地の山のいで湯

※写真は1980年代のものから最近のものまであり、すでに廃業していたり、現状が変わっている可能性もある前提でご覧下さい。



↑北海道上富良野町。十勝岳温泉・湯元凌雲閣。富良野岳など十勝連峰の登山口にある

↓北海道上富良野町。吹上温泉保養センター 白銀荘。近くに無料の露天風呂「吹上露天の湯」も



↑北海道上川町。大雪山系・愛山渓温泉の愛山渓倶楽部。最寄りの国道から車で約30分かかる

↓北海道三笠市。湯の元温泉旅館。夕張岳登山の際に立ち寄り湯した



↑北海道斜里町。岩尾別温泉・ホテル地の涯。知床半島・羅臼岳登山口にある

↓北海道足寄町・雌阿寒温泉・野中温泉。雌阿寒岳の登山口にある



↑北海道今金町。奥美利河温泉・山の家。美利河丸山の登山口にあるが、休業中

↓北海道島牧村。千走川温泉旅館。狩場山や賀老高原の中腹にある



↑北海道長万部町。二股らぢうむ温泉。宿の裏手には道指定天然記念物の石灰華ドームあり

↓北海道蘭越町。新見温泉・新見本館。目国内岳の中腹にあったが、2017年に閉鎖



↑青森県青森市。八甲田山系・田代平湿原そばにある八甲田温泉

↓青森県青森市の酸ヶ湯温泉旅館。いわずと知れた八甲田山系を代表する名湯。積雪の多さを伝える場所として全国的に有名



↑青森県青森市。城ヶ倉温泉・ホテル城ヶ倉。八甲田大岳方面の登山口でもある

↓青森県十和田市。元湯猿倉温泉。櫛ヶ峯など、南八甲田山の主要登山口にあり、宿泊したことがある



↑青森県十和田市。谷地温泉。開湯400年以上という歴史的秘湯。すぐ前に谷地湿原が広がる

↓秋田県鹿角市。八幡平の後生掛温泉。「ごしょがけ」と読む。付近には噴気孔が並ぶ後生掛自然研究路が一巡している



↑秋田県鹿角市。蒸ノ湯温泉ふけの湯。八幡平の温泉の中では最古とされる

↓岩手県八幡平市。八幡平樹海ライン沿いに建つ藤七温泉・彩雲荘。野湯の奥藤七温泉も裏手にある



↑岩手県八幡平市。南八幡平の松川温泉・松川荘。三ッ石山などの登山口の前に建つ。ほかに峡雲荘もある

↓岩手県雫石町。乳頭山(烏帽子岳)の岩手県側にある滝ノ上温泉・滝観荘。もう一軒、滝峡荘もある



↑秋田県仙北市。乳頭温泉郷・蟹場温泉。ほかに鶴の湯温泉、孫六温泉、黒湯など6湯も付近に点在

↓岩手県雫石町。秋田駒ヶ岳の岩手県側登山口にある国見温泉・石塚旅館。もう一軒は森山荘



↑岩手県北上市。焼石連峰の中腹にある夏油温泉・元湯夏油。夏油は「げとう」と読む

↓岩手県一関市。栗駒山の元湯 須川高原温泉。県境を越えれば秋田県側に須川温泉・栗駒山荘もある



↑宮城県栗原市。栗駒山の湯浜道路入口に建つ湯浜温泉・三浦旅館。ランプの宿として知られる

↓宮城県栗原市。湯ノ倉温泉・湯栄館。ここもランプの宿として人気があったが、2008年の岩手宮城内陸地震で被害を受けて廃業した



↑山形県朝日町。朝日連峰の登山口に建つ朝日鉱泉ナチュラリストの家

↓山形県米沢市。五色温泉・宗川旅館。2020年に閉館し、現在はオートキャンプ場になっている



↑山形県米沢市。吾妻連峰の滑川温泉・福島屋。さらに奥に姥湯温泉もある

↓福島県福島市。微温湯温泉・旅館二階堂は吾妻連峰に抱かれた一軒宿



↑福島県福島市。吾妻連峰の土湯峠にある赤湯温泉・好山荘。性質の異なる源泉がふたつある

↓福島県福島市。同じく土湯峠にある鷲倉温泉高原旅館。ここも2種類の源泉を持つ。写真は改築前の建物



↑福島県二本松市。県営くろがね小屋。安達太良山にある温泉に入れる山小屋。撮影は1994年

↓その7年後の2001年に撮影した同小屋。外装がきれいになり、太陽電池パネルが設置されていた



↑くろがね小屋の浴室。泉質は単純酸性泉で、わずかに白濁している。立ち寄り湯もできる

↓福島県檜枝岐村。尾瀬檜枝岐温泉・駒の湯の浴室。尾瀬や会津駒ヶ岳帰りに利用したい立ち寄り湯。ほかに燧の湯やアルザ尾瀬の郷でも入浴できる



↑栃木県那須塩原市。那須連山の山懐に抱かれた三斗小屋温泉・大黒屋。本文で触れた秘湯。隣接して煙草屋旅館もある。1986年撮影

↓福島県西郷村の甲子温泉・旅館大黒屋。甲子は「かし」と読む。2008年撮影で、現在は建物が新しくなっている



↑栃木県日光市にあった女夫渕温泉ホテル。2013年に地震の被害を受けて廃業した

↓栃木県日光市の奥鬼怒温泉・加仁湯。5つの源泉があり美人の湯として知られる



↑栃木県那須塩原市。塩原温泉郷の福渡温泉にあった混浴露天風呂の岩の湯。現在は閉鎖。写っている人には撮影承諾を得ている

↓群馬県みなかみ町の宝川温泉汪泉閣。谷川連峰朝日岳の中腹にあり、4本の源泉を有する



↑新潟県魚沼市。駒の湯温泉・駒の湯山荘。越後駒ヶ岳の登山口そばにあるランプの宿

↓露天風呂で前出。新潟県湯沢町の赤湯温泉・山口館。苗場山登山で利用したい。撮影は1991年


        

↑新潟県糸魚川市の島道鉱泉。建物は国の登録有形文化財に指定されている

↓新潟県妙高市。杉野沢温泉・苗名の湯。本文に書いたように最も利用回数が多い立ち寄り湯



↑山梨県韮崎市。南アルプス・地蔵ヶ岳山麓にある御座石鉱泉。現在は休業中のようだ

↓長野県栄村。秋山郷の最奥にある切明温泉・雄川閣。近くに野湯の「河原の湯」がある



↑長野県小谷村。小谷温泉・雨飾荘。徒歩3分のところに露天風呂もある

↓同じく雨飾荘。改築前の建物で、何度か立ち寄り湯で利用した。撮影は2006年



↑長野県長野市。奥裾花温泉・鬼無里の湯。現在は「鬼無里の湯ホテル&コテージ」に変更

↓浴室で前出。長野県小諸市の天狗温泉・浅間山荘。浅間山の登山口に建つ



↑長野県小諸市。ランプの宿として人気が高い高峰温泉。湯の丸高峰林道沿いにある

↓長野県小海町。八ヶ岳中腹、標高1520mの地に建つ稲子湯旅館。みどり池方面の登山口



↑長野県南牧村の本沢温泉。硫黄岳中腹に位置し、標高2100mは日本で二番目。撮影は1987年

↓その本沢温泉・雲上の湯は、日本で最も高い場所にある露天風呂



↑長野県茅野市の唐沢鉱泉。未舗装林道の終点に建ち、天狗岳方面の登山口になっている

↓長野県茅野市。奥蓼科温泉郷・渋御殿湯。狭い県道終点にあり、高見石方面の登山口



↑長野県茅野市。八ヶ岳・硫黄岳中腹、標高2060mにある夏沢鉱泉。桜平の駐車場から徒歩で30分かかる

↓長野県茅野市。八ヶ岳・赤岳の登山基地・赤岳鉱泉。入浴は5~10月のみ。撮影は1989年



↑長野県松本市。扉温泉・群鷹館は2011年に閉館したが、明神館は営業している

↓長野県白馬村の白馬鑓温泉小屋。北アルプス・白馬鑓ヶ岳中腹、標高2018mにある露天風呂がある山小屋。撮影は宿泊した1988年



↑長野県大町市。高瀬渓谷の奥にある湯俣温泉・晴嵐荘。2018年の水害で宿の前にかかる吊り橋も流された。写真はその直後に撮影

↓長野県木曽町。御嶽山六合目にあった中の湯本館。1990年に御嶽山から下山して立ち寄り湯した時に撮影したものだが、2016年に閉館した



↑広島県安芸太田町。三段峡・正面口の三段峡ホテル。レトロな味わいがある宿。泉質は弱単純放射能泉

↓福岡県添田町の英彦山温泉しゃくなげ荘。英彦山中腹にあったが、令和2年に廃業した



↑熊本県南阿蘇村。阿蘇山中腹の垂玉温泉。撮影時は「山口旅館」だったが、その後「瀧日和」に名前が変わった

↓鹿児島県霧島市の新湯温泉新燃荘。霧島連山の新燃岳中腹にある一軒宿。お湯は乳白色の単純硫黄泉








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