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テングノムギメシ 長野県小諸市

撮影年月日:2018年7月11日

 テングノムギメシ(天狗の麦飯)の産地は、長野県と群馬県に何カ所も見出されており、現在は失われた場所もあれば、健在な場所もある。地元の人でも「名前を聞いたことはあるが、一度も見たことはない」というのが多くの実態だろうと思う。

 見た目は麦飯や粟飯を連想させるが、産地により粒子状とペースト状の2タイプが知られる。あの小林一茶も「涼しさや 飯を掘出す いづな山」とテングノムギメシを題材にした句を詠んでいるほど、古くから「食べられる砂」とされ、修験者が食べていたとも伝わる。味も香りもないが、口に入れるとやわらかいという。近年、研究が進み、かなり具体的なことまで判明している。簡単に言うと、10種類以上の細菌と、一部の細菌が作り出す不溶性物質からなる複合体らしい。

 そんなテングノムギメシの産地として、最も有名なのは、長野県小諸市の、通称「味噌塚」と呼ばれる台地。国の天然記念物に指定されているが、地下にあるため、現地に行ってもテングノムギメシを目にできるわけではない。また、地面を掘ることは法律で禁止され、仮に掘ってみたとしても、すぐにテングノムギメシが出てくるほどに浅い場所にあるわけでもないと思われる。ただ、立ち入りは制限されていないので、案内板と天然記念物の石柱を写真に収めることは可能だ。

 実は、ここから、さほど遠くない山中にもテングノムギメシ産地がある(もちろん非公開)。以前、テングノムギメシをいろいろ調べた際に偶然、ピンポイントの位置情報を知る機会を得た。現地に出向いてテングノムギメシがあることを確かめたわけではないが、健在なのは間違いないようだ。

※関連情報→本サイト「著書の紹介」。この中の『信州探検隊』(信濃毎日新聞社)で、テングノムギメシに関する最新の知見等の情報を詳しく紹介しておきました。ご興味がある方は、この本をご参照下さい。




長野県小諸市のテングノムギメシ産地に立つ、国の天然記念物を示す石柱。すぐそばをJR小海線が走っており、市街地に残された、台地状の草っ原にしか見えない。



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