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何だ?コレ20 岐阜県下呂市

撮影年月日:2018年8月29日

 8月下旬、岐阜県下呂市の自然度が高い山林内で見かけたキノコ(菌類の子実体)である。見た瞬間、変わったキノコだな…とは思った。しかし、家に帰って詳しい図鑑で調べれば、名前はすぐにわかるだろう。似たようなキノコを図鑑で見たような気もしたからだ。

 ところが帰宅して、分厚い日本産キノコ図鑑を最初から最後までめくってみたが、同一種と思われる種類どころか、似た種類さえも見つけられなかった。無理していえば、エゾハリタケとかブナハリタケくらいが、近いといえば近そうだが、両種と比較しても結構な差異がある。

 何より変わっているのは、乳白色をしたブラシのような傘の方ではない。土台状部分の方である。このキノコには、傘とは別に茶褐色をした「柄」と呼ぶにも相当な違和感がある土台状部分があり、どうも時間経過とともに変色・変質した老菌のようなのだが、ブラシのような傘には一切ない多数の刺(毛?)が密生しており、一見、両者は異質に見える。もしかすると、この部分はキノコとは別種で、例えば変色した蘚苔類だったりするのかもしれない…とも思ったが、撮影した写真を細かく見ると、明らかに蘚苔類ではなく、傘と土台状部分は連続した同じ菌類ということがわかる。

 大きさは幅4〜6センチほど。鼻を近づけると、いかにも食用にできそうな香りのいいキノコ臭がした。付近には、もっと大きな同種のキノコ(やはり土台部分あり)や、同じく同定できなかった種名不明のゼラチン状のキノコもあった。

 図鑑に載っているキノコなんて、ごく一部に過ぎないのはいうまでもないが、こんなに奇妙な形態のキノコって初めて見た。

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【追記】
 その後、どうしても気になったので、神奈川県立生命の星・地球博物館の菌類の専門家に写真を見て頂いたところ、北半球の比較的寒冷な地域の広葉樹の倒木に発生するGloiodon strigosus という種に非常に似ているとのご回答を頂いた。このキノコは、傘上部に刺状の剛毛体が密生し、傘の下(子実層)は針状になる特徴があり、おそらく国内からは未報告ではないかとのことだ。新種じゃないけど、これまで国内に存在するとは誰も知らなかったキノコということだね。念のため聞いてみるもんだね〜。またゼラチン状のキノコもついでに聞くと、こちらはニカワハリタケとのことだった。



蘚苔類に表面が覆われた倒木の切断面に生える奇妙な子実体(上)と、そのブラシ状部分の拡大(下)。下方から見上げるようにして撮影。






土台状部分の拡大。どう見ても蘚苔類ではない。矢印部分を見れば、傘と同じ乳白色をした刺があり、両者の中間形態ともいえ、連続した同種の菌類としか思えない(上と下写真とも)。老菌の塊になると刺が生えてくる…ということになるし、成菌と老菌がこんな形で混在するキノコなんてあるのだろうか。






同じ倒木に生えていたゼラチン状のキノコ。種名不明。→ニカワハリタケだそうです



その傘裏面。ひだはなくて細かい突起に覆われている。


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山岳記