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道標 群馬県片品村・尾瀬ヶ原

撮影年月日:2010年7月20日

 道標とは、登山道や遊歩道の分岐などに立てられ、「こっちの道は○○に続くよ」「距離や時間はこれくらいだよ」といった情報を教えてくれる標識のこと。「みちしるべ」とも読めるが、登山では「どうひょう」と呼ぶことが多い。
 道標は古くからあり、旧街道や古道には、江戸期に置かれた石に文字が手彫りされた簡素な道標が今でも路傍にひっそりと置かれている。

 分岐ではない、途中の道端に設置されていることも多く、その場合は分岐に着く前に自分の目的地と合っているか確認できる利点があり、万一間違っていた場合のタイムロスを防ぐ意味もある。距離や時間が書いてあれば、あとどれくらいで目的地か、把握できるメリットも大きい。

 登山道に道標が立っているのも「山らしい風景」。私は、仕事上必要なので、特に分岐点に立つ道標はほとんど撮影しているが、趣味で登山をしていた時期も結構、撮影してきた。それを改めて見返してみると、道標も少しずつ進化していることが伺える。かつては板にペンキで手書きされたものがほとんどで、文字がかすれて読み取りにくいもの、表示板が外れたままのもの、支柱が回転して違う方向を向いているもの…みたいな道標も時々あったが、最近の道標は、専門業者が製作していることも多くて、かなりしっかりした作り。表示文字も印刷されたようにきれいで、ルビや英語表示も添えられていたり、確実に昔よりも進化している。中には道標に固有のレスキュー番号をふって、遭難時に瞬時に現在ポイントを警察に伝えられるように工夫がされている山系もある。

 また何年か経過して再訪してみると、以前の道標がなくなって新しい道標になっていることもある。劣化して文字が読めなくなると問題なので、地元行政が時々確認して、必要とあれば作り直しているのだろう。




尾瀬ヶ原の西の玄関口・山の鼻に立つ道標。支柱や文字板はどちらも木製。文字部分は白ペンキでそのまま書いてあるわけではなくて、彫り込み文字になっていて、その凹部に白ペンキが塗ってある。そのまま書くよりもペンキが剥がれにくいからだろう。かなり手間がかかる製作方法が採用されていることがわかる。尾瀬を歩く人の中で、これに気づいている人ってどれくらいいるだろうか? 2010年撮影。



1995年に北海道の羊蹄山で撮影した道標。これはペンキで手書きされたもの。



文字板が支柱から外れて、近くの朽ちかけた株の上に置かれた道標。1999年に会津駒ヶ岳で。



尾瀬ヶ原・竜宮十字路の木道上に設置されたユニークな道標。尾瀬ヶ原には普通の道標も立てられているが、こんなタイプもある。2012年撮影。



野反湖と大沼池を結ぶ上信国境の稜線上、木に打ち付けられた道標。昔は、道端の木に直接、釘で打ち付けられた道標はよくあったが、最近は減った。やはり木に負担をかけるからだろう。2010年撮影。



同じく上信国境のカモシカ平で見かけた道標。2010年撮影。



富士山の宝永第1火口縁分岐に立つ道標。世界中から登山者がやってくる山だけあって、英語と韓国語も併記。木や金属板を組み合わせて作られていた。2015年撮影。



湧き立つ雲を背景に。長野県松本市・美ヶ原で。2009年撮影。

NEW

槍ヶ岳と道標。北アルプス・燕岳の合戦尾根で。



奈良県天理市と桜井市を結ぶ山の辺の道の道標。道路上に設置され、矢印でルートを示してあった。シンプルだが、山の辺の道のように市街地や田園地帯を歩くコースでは、これでも十分。2015年撮影。



山の辺の道には、もちろん普通の道標もある。2015年撮影。



京都と小浜を結ぶ「鯖街道」の道標。海産物を京へと運んだ若狭街道のことで、鯖街道というのは近年になってからの命名である。2011年撮影。


●積雪期←→無積雪期の道標

谷川岳で見かけた道標。コンクリート固定されたケルンの上に立てられている(上)が、残雪期に行くと、雪面から表示部分だけが出ていた(左)。積雪は3mくらいあるかも。上写真は1989年撮影。左写真は1995年撮影。

ちなみに豪雪地にある道標は、シーズンを終えると表示板が取り外されることもある。そのままだと融雪の際などに壊れることがあるからだろう。
 →本サイト山岳記「シーズンオフの山」参照



●全国各地の道標

北海道・利尻山。2013年撮影。

北海道・大雪山系。2013年撮影。

北海道・天塩岳。1995年撮影。すべて金属製。

北海道・嵐山。2013年撮影。

北海道・夕張岳。1995年撮影。木彫のように彫り込まれてあった。現在はない。

北海道・つつじヶ原自然探勝路。2013年撮影。

青森県・南八甲田。2002年撮影。

岩手県・早池峰山。1995年撮影。

秋田県・森吉山。表示文字が小さくて目を近づけないと、何が書いてあるのかわからない。どうでもいい「秋田県」の方が大きいのもねぇ。道標としては、あまり好ましくない。2002年撮影。

秋田県・森吉山山麓。2008年撮影。

秋田県・虎毛山。2002年撮影。

岩手県・岩手山。1995年撮影。

山形県・吾妻連峰。1994年撮影。

栃木県・那須連山。一見、何かの碑のようだが道標だ。2012年撮影。

栃木県・日光白根山。1990年撮影。

栃木県・戦場ヶ原。2012年撮影。

栃木県・庚申山。2012年撮影。

群馬県・赤城山。2010年撮影。

群馬県・赤城山。手作り感たっぷり。2006年撮影。

群馬県・四阿山。2015年撮影。

群馬県・芳ヶ平。2015年撮影。

山梨県・キープ自然歩道。2012年。

南アルプス・北岳。1989年撮影。

奥秩父連峰・国師岳。1990年。

奥秩父連峰・大ダオ。1989年撮影。

南アルプス・鳳凰三山。支柱ごと倒れたままだった。背景は北岳。1995年撮影。

山梨県・棒道。表示板はなんと陶器製。2012年。

北八ヶ岳・北横岳。2009年撮影。

八ヶ岳・みどり池入口。2010年撮影。

長野県・湯ノ丸高原。2012年撮影。

長野県・志賀高原。2006年撮影。

長野県・上ノ平高原。2008年。現在はない。

北アルプス・五竜岳。1994年撮影。

北アルプス・常念岳。1986年撮影。

長野県・新潟県にまたがる関田山脈。2015年撮影。

長野県・霧ヶ峰。2015年撮影。

中央アルプス・木曽駒ヶ岳。2008年撮影。

埼玉県・釜ノ沢五峰。2006年撮影。

奥秩父連峰・両神山。1995年撮影。

奥多摩・戸倉三山。1984年撮影。

奥多摩・石尾根。1989年撮影。

神奈川県・鎌倉天園。2013年撮影。

神奈川県・弘法山。2010年撮影。

丹沢山塊・檜洞丸。1990年撮影。

神奈川県・箱根。1985年撮影。

神奈川県・箱根 明星ヶ岳。2005年撮影。

静岡県・富幕山。2012年撮影。

愛知県・鳳来寺山。2015年撮影。

岐阜県・巌立峡。2015年撮影。

鈴鹿山脈・御池岳。2016年撮影。

大阪府・和泉山脈。2011年撮影。

兵庫県・近畿自然歩道。2011年撮影。

滋賀県・己高山。2011年撮影。

京都府・大江山。2011年撮影。

京都府・弥仙山。「頂上エ二千五百十五米」とある。2011年撮影。

京都府・佐々里峠。「是ヨリ上地蔵森」と書かれている。2011年撮影。

三重県と滋賀県県境の鈴鹿峠。「是より京まで十七里」とある。2011年撮影。

奈良県・吉野山。2015年撮影。

広島県・三段峡。路面に設置。2012年撮影。

広島県上蒲刈島・七国見山。2003年撮影。

島根県・安蔵寺山。2016年撮影。

山口県・秋吉台。2016年撮影。

愛媛県・石鎚山。2001年撮影。

鹿児島県・御岳。2014年。

広島県・比婆山。2016年。

大分県・くじゅう連山。2013年撮影。

長崎県対馬・金田城。2014年撮影。韓国人観光客が多い対馬だけのことはあって、ハングルも添えられていた。

鹿児島県屋久島・白谷雲水峡。2014年撮影。


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