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峠1 車で行ける峠編 大阪府東大阪市・暗峠など

撮影年月日:2011年7月4日など

 峠とは、山麓から稜線を越えて反対側の山麓へ通じる道の最高地点のこと。昔は、ピークを目指すレジャーとして登山をする人はいなかったので、山を挟んだ町や村どうしを結ぶ、あくまで生活や交易のための道しかなかった。当然、稜線を越える際は、わざわざ高いピークではなく、少しでも標高が低い鞍部にルートを通す方が、体力的にも時間的にも効率がいいのはいうまでもない。従って峠がある場所は、ほとんどの場合、鞍部ということになる。
 現在では、国道や県道のような車道が越える峠も多いが、そのすべてが、かつては人や牛馬が歩くだけの生活・交易道だったのだろう。従って自動車が行き交うような峠にも、往時に設置された古びた地蔵や石仏がひっそりと残っていることもあるわけだ。

 最近では、特に峠を越える車道区間全体を「峠」と呼ぶ人もいるようだが、本来の峠とは、地図上でピンポイントで特定できる1点を指し、そこに続く道はあくまで「峠道」であっても「峠」ではない。

 ところで峠といえば、以前、こんな経験がある。十年ほど前のことだが、私が登山口情報本を企画した当初、情報項目として検討したもののひとつに「車上荒らし被害状況」もあった。登山口の駐車場に車を停める際、車上荒らし被害に逢わないか、特に人気のない場所では不安を覚えた経験を登山者であれば誰しも持っていると思う。つまり「この登山口は過去に車上荒らしの被害が多い」ということがわかれば対策も可能なはずで情報として有益と考えたのだ。そこで、とりあえず様子だけでも聞いてみようと山岳地を管轄する警察署に2、3電話してみることにした。データとして集計していれば、提供してもらえるかもしれない。

 まず最初に北アルプスの登山口を有する長野県警大町署生活安全課に電話し、「これこれこういう本の企画を考えています。ついては車上荒らしの情報も入れたいので、被害データの提供は可能ですか?」と問うと、管内では特に車上荒らしの被害が増えているようなことはなく、登山口単位で被害の集計もしていないとのこと。大町署の対応は、ごく普通だった。

 続いて丹沢山系を有する地元・神奈川県警秦野署にも電話してみたのだが、これがまたビックリの驚きの対応だった。秦野署生活安全課に電話をして大町署と同様に企画内容をまず説明。その上で「丹沢山系では、登山口の車上荒らし被害は多いですか?」と聞いたところ、私の説明を理解できなかったのか、よく聞いていなかったのかは知らないが、おそらく車上荒らし犯がさぐりを入れてきた…とでも勘違いしたようだった。最初から疑うような口調で「登山口って具体的にどこのこと?」。私が「例えばヤビツ峠です」と答えると、「ヤビツ峠の県道はずっと駐車禁止で、停める場所なんかないですよ」と咎めるようないい方をしてきた。まるで「おまえ、駐車違反してるだろ」みたいな口調なのだ。私が「えっ! 峠に駐車場があるじゃないですか? トイレがあるところですけど」というと半笑いで「あぁ、あそこね」だと。

 ヤビツ峠といえば、駐車場とトイレ、売店があり、丹沢山系の主要登山口でもある、あのヤビツ峠に決まってる。私はあくまで「ヤビツ峠」といったのだ。「ヤビツ峠を越える県道」なんてひと言もいっていない。しかも秦野市の治安を守る警察官が、「ヤビツ峠」といわれて、峠の駐車場がすぐに頭に浮かばないなんてあり得ない。

 最後に名前を聞かれ、何も悪いことをしているわけではないので隠す必要もないし、というか最初に名乗っているのだが、再度「秦野市内に住んでいます日野と申します」といったところ、「ハダノさん?」。
 うわ〜。トンチンカンなのにも程がある。なんかスゲー危なっかしい警察官だな〜。聴覚と脳ミソの方、大丈夫ですか? おまわりさん。私の勝手な想像だが、この警察官は脳の認知機能に何らかの医学的な問題があるとしか思えない。それくらいの異常対応である。

 もう一度、声を大にしていっておこう。本来の峠とは、地図上でピンポイントで特定できる1点を指し、そこに続く道はあくまで「峠道」であっても「峠」ではない…ということを。山岳救助隊まで有する警察署員が、峠の定義も理解していないなんて、あり得ない〜!! 超絶ビックリ!! 
 ただ、秦野署の警察官は、運転免許更新・その他の際に何度か会話したことがあるが、この人以外のすべてでごく普通の対応だったことは念のためいっておこう。

 実際、車上荒らし被害状況を調べるのは大変であり、しかも、ほかの警察署でも問い合わせの意味を理解してもらえず似たような対応をされるかも…と考えると気力も失せて、登山口情報本に項目として入れるのは断念。現地に「車上荒らし注意看板」が立っていれば、それを記載するだけにした。まあ、それだけでも過去に車上荒らしがあっただろうことは予想がつくわけで、それくらいでご勘弁を。





大阪府東大阪市と奈良県生駒市にまたがる生駒山系の暗峠(くらがりとうげ)。暗越奈良街道の難所として知られ、写真の石畳は江戸時代に敷設されたもの。現在は山麓から上がっている国道308号と稜線上にのびる信貴生駒スカイラインが立体交差しており、奈良県側の後者沿道から撮影。府県境は、写真の「峠の茶屋」奥(「大阪府東大阪市」の標識がある場所)を横切っている。



北海道壮瞥町と登別市の市町界にあるオロフレ峠。旧道に上がるとオロフレ峠展望台があり、羊蹄山などの眺めがよい。かつては売店などがあり、観光客で賑わっていたが、現在は駐車場とトイレがあるのみ。



青森県鰺ヶ沢町と深浦町の境にある天狗峠の標識。西目屋と深浦を結ぶ白神ラインが抜ける。



同じ白神ラインの途中、青森県西目屋村と鰺ヶ沢町の境にある津軽峠。かつては未舗装林道が通るだけだったが、白神山地のマザーツリーも近くにあることから駐車場とトイレが整備された。2008年6月撮影。



その津軽峠の駐車場工事をしているところ。2005年7月撮影。



県道167号が通る岩手県釜石市と住田町の境にある箱根峠。行ったときは住田町側は通行止だった。ここの取材時、写真奥右手にのびる荒れた林道で、早朝ということもあってかツキノワグマ1頭と遭遇。



早池峰山の登山口・岩手県遠野市の小田越。西側の花巻市と東側の宮古市の境のようにも思えるが、実は花巻市と宮古市の間に割って入るように遠野市の市界が早池峰山山頂までのびており、小田越の地籍は完全に遠野市である。



埼玉県、群馬県、長野県3県の県境が接する三国山の南側直下にある三国峠。峠自体は埼玉-長野県境上にあり、それぞれ市道と村道が通じているが、埼玉側は未舗装で、しかも冬期と夜間は通行止になる。写真の小屋はトイレ。関東地方の車でアクセスできる峠の中にあって、特に秘境感を感じる峠のひとつ…と私は思う。



国道139号が抜ける山梨県大月市と小菅村の境にある松姫峠。武田信玄の娘・松姫が、織田信長軍から逃れるためにこの峠を越えたことに因む名前。



静岡県伊豆市と西伊豆町の境にある仁科峠。付近はのびやかな笹原に覆われた稜線が続き、明るく開放的な景観が広がる。写真の駐車場から右手ピークまで登山道があり(伊豆山稜線歩道の一部)、あまりに気持ちいい雰囲気に誘われてピークまで足をのばしたい衝動にかられた。結局、時間がなくて行かなかったが、いつかこんな快晴日に付近を散策してみたいものだ。



志賀草津道路(国道292号)が越える群馬-長野県境上の渋峠。写真手前が志賀高原側。そのまま下れば群馬県草津町なので、写真の奥も草津町と思いがちだが、実は中之条町(写真は合併前に撮影したものなので標識は「六合村」になっているが…)である。



長野県南相木村と川上村の境にある馬越峠。天狗山の登山口なので、登山者の車が多い。



長野県木曽町・木曾街道が越える地蔵峠。名前の通り、お地蔵様が鎮座。峠に地蔵や石像を祀るのは、道程の安全を祈るだけでなく、結界の意味もあるのだろう。



国道157号が越える岐阜県本巣市と福井県大野市の境にある温見峠。両県ともに山麓から標高1020mもある峠まで狭いワインディングロードが続き、よく災害で通行止になる。能郷白山の登山口でもある。



岐阜県揖斐川町と福井県池田町の境にある冠山峠。温見峠と同様に山麓からのアクセスは、やたら時間を要する。道路は舗装された冠山林道。



京都府京都市左京区と京都府南丹市の境にある佐々里峠。その昔、平家の落人が越えたとも伝えられる。ここから京都大学芦生研究林に下るコースもあるが、入林の際は許可が必要。ちなみにここにも古い石像が置かれている。



阿蘇山の東側、熊本県阿蘇市と高森町の境に位置する日ノ尾峠。両側の山麓から舗装された日ノ尾林道が通じているが、現在は熊本地震や阿蘇山噴火の影響から通行止。撮影したのは2014年に阿蘇山が噴火した当日で、火山灰のために路面が黒っぽい。


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