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山の渋滞 山梨県山梨市・西沢渓谷

撮影年月日:2005年10月25日

 山の渋滞といっても車のことではなくて、登山道で人が列をなす話。ハイシーズンの休日、人気コースを歩こうものなら、時に登山道や遊歩道で渋滞が発生し、それに巻き込まれることがある。特に近年は登山ツアーも盛んということもあって、大型バスで登山口に乗り付けて、数十人規模の団体さんがやってくることも珍しくない。当然そういう団体が複数重なれば、渋滞も発生しやすくなる。
 本来、登山道みたいなところは、大人数の人間が歩くのに適しているわけではないのだが、そんなことはお構いなしというツアーもあるのだろう。登山ツアー自体を否定する気はないが、せいぜい10人以下のグループに小分けして、それぞれガイドを付けて、間を空けて出発すれば渋滞も起こりにくく、ほかの登山者の迷惑にもならないと思うのだが、客を遭難死させてしまうレベルの低い旅行会社が平気で営業している実態を考えれば、そんな配慮さえしない旅行会社があっても不思議ではない。

 もう何年も前の話だが、尾瀬の裏燧林道を御池から上田代まで足をのばした際、御池の少し先で上田代方面から下山して来たツアー団体様ご一行に遭遇したことがある。ちょっとした登りの手前だったので、最初は2〜3人しか見えず、私は横に避けて待っていた。トップで下りてきたのはツアー団体のガイドだったようで、こともなげに「このあと30人続きます」とだけ告げて私の前を通り過ぎていった。その言葉通り、次々にツアー参加者が下ってくる。彼らは待っている私に「すみません」の一言どころか挨拶すらもなく、自分たちが優先して下るのが当然であるかのように無言で通り過ぎて行く。少し間が空いたので、ようやく終わったかと思いきや、まだ参加者が続くので、登りかけたのをやめてさらに待つ…の繰り返し。しかも最後の人も「私で最後です」といわないので、終わりなのかまだ続くのかさえわからない。「どっちなんだよ」とイライラしながら、しばらく待って、ようやく本当に終わりだということがわかった。
 登り優先が山の基本マナーとはいえ、確かにそれを頑なに守る必要はなく、状況次第で逆になっても構わないのだが、それにしてもほかの登山者への配慮を微塵も感じない我が物顔ぶりにちょっと呆れた。

 ただでさえ大人数というのは、こういう場所では迷惑であり、十分すぎるほどの配慮が必要だと思うが、それを実行する団体に出会った経験はほとんどない。唯一、吾妻連峰・東吾妻山で遭遇した20人くらいの関西から来たと思われる団体さんは、相当山慣れしていると見えて、その細かい配慮に感心したことがある。彼ら以外の登山者は私しかいなかったが、「団体様のお通りだ」みたいな姿勢は微塵もなく、気持ちのいい気遣いがあって、何度も「大人数ですみません」「ご迷惑おかけします」といわれて、逆にこちらが恐縮するほどだった。

 渋滞が発生すれば、単に時間がかかるだけでなく、落石など万一の事態に対応しにくくなり、被害が大きくなる可能性もある。渋滞を避けるには、混雑しそうな時期・時間に行かないことくらいしか対処方法はない。



紅葉期の西沢渓谷で、100人以上はいたと思われる登山ツアーの大団体に遭遇。この渓谷道は登り一方通行だが、狭い岩場の道なので、初心者の彼らはどうしてもゆっくりしか進めない。当然、大渋滞となり、この先しばらくノロノロが続いた。こういうプランを平気で立案する神経もちょっと信じられない。



8月の谷川岳も天候に恵まれ登山者が多かった。一時的だが、尾根道は人の列ができた。



白馬大雪渓のような人気コースも時としてこんな感じに。



尾瀬ヶ原の木道に連なる人。群馬県では、実費を県が補助して県内の小・中学校に尾瀬で環境学習をする「尾瀬学校」制度を推奨していることもあるのか、近年は特に混雑しやすくなった気がする。




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