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山の石像 福島県福島市・吾妻連峰 姥ヶ原

撮影年月日:1992年10月03日

 信仰と密接に結びつく山では、いろいろな石像と出会う。地蔵像や観音像などさまざまで、その背景にある歴史も異なるが、例えば旧街道の峠道では、点々と観音像が置かれ、かつて旅人が苦労して越えたであろう歴史を垣間見る思いがする。また伊吹山山頂には、古事記がその伝説を伝える日本武尊像が迎えてくれるし、あるいは遭難死亡者を弔うためか、新しく置かれた仏像を見かけることもある。
 ちょっと変わっているのが、姥神像だろうか。福島県には多いようで吾妻連峰・姥ヶ原に鎮座する姥神さまは、登山者にもよく知られた存在である。姥神、姥権現など呼び方は異なるが、会津地方では「おんば様」と親しまれているそうだ。『歴春ブックレット おんば様』(歴史春秋社)によると、江戸時代以前から民間信仰の対象にされた不思議な仏様、神様、権現様だという。山姥や奪衣婆(だつえば。=三途の川で亡者の衣服をはぎ取る老婆)の姿ともいわれ、女人禁制だった山岳修験道では、おんば様の石像を祀って結界にしたという。




吾妻連峰・姥ヶ原に鎮座する姥神さま。口には牙があり、片膝を立てている。



山梨県北杜市・八ヶ岳山麓にのびる信玄棒道には、沿道に観音像が点々と置かれている。



観音像に見送られて秋葉街道の峠道を行く/長野県飯田市・小川路峠。


赤い前掛けをした石仏81体が斜面にずらりと並ぶ三ツ峠山の八十八大師。撮影は1985年/山梨県西桂町・三ツ峠山(左)。南アルプス・地蔵岳オベリスク直下に鎮座する石仏。撮影した1986年当時、どちらも比較的新しいものだった(右)。


北陸街道の山まわり道が通っていた坂田峠の地蔵さま/北アルプス・坂田峠(左)。本を読んでいる僧のように見える妙義山・中間道にある「本読みの僧」/群馬県富岡市・妙義山(右)。


山じゃないけど、千国街道の百体観音。建立されたのは江戸時代だが、村内各地に分散して置かれていた観音像を明治になってここに集めたという(左)。屋久島最高峰・宮之浦岳山頂の三角点上にちょこんと置かれていた手作りの石仏(?)。その後の安否が気になるところだが、多雨・多雪地帯だけにさすがに吹き飛ばされているかもしれない(右)。


伊吹山山頂の日本武尊像(左)。頭が欠けてしまったので、代わりに石を置いた双体神の石像/栃木県宇都宮市・鞍掛山(中)。30〜40体もの石仏が並ぶ大厳寺高原・不動社/新潟県十日町市(右)。




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