<<前のページ 次のページ>>
鮮やかな花が目立つ
シモツケソウ

バラ科
Filipendula multijuga
…………………………………………………………………………………………………

 シモツケソウと紛らわしい植物にシモツケがある。どちらもバラ科だが属は異なり、さらには多年草のシモツケソウに対して、シモツケの方は落葉低木だ。シモツケは下野、つまり栃木県に多いこと(実際は多いわけでもない)から名付けられたが、そのシモツケに似た草ということでシモツケソウと名付けられたという。あ〜紛らわしい。

 シモツケソウは本州〜九州の山地に生え、7〜8月には直径5ミリ程度の鮮やかなピンク色の花を多数つける。よく似たなかまとして、長野県や山梨県などにはそう果に縁毛がある変種・アカバナシモツケソウ(var. ciliata)、北海道にはエゾノシモツケソウ(F. yezoensis)、山形県〜富山県の日本海側にはコシジシモツケソウ(F.purpurea var. auriculata)がある。さらにオニシモツケもあるが、こちらは白い花なので区別は容易。ただしシモツケソウの白花もあるから注意する必要があるかも。オニシモツケの托葉は大きな円形で茎を抱くようにつくが、シモツケソウのそれは膜質で直立する。なおコシジシモツケソウは葉の裂片が細くて先が長くのび、鋸歯は細かいが、シモツケソウは葉の縁が欠刻状の重鋸歯になる、という違いがある。

 北アルプスの花の本やガイド記事にはアカバナシモツケソウの名前を見ることがあるが、本当にアカバナシモツケソウであることを確認しているのか、特にシモツケソウの名前は一切出てこずアカバナシモツケソウの名前しか出てこない記事は疑問に感じる。北アルプスにはアカバナシモツケソウしか分布しないという思いこみで、すべてをそれだとして判断している疑いがある。『長野県植物誌』の分布図を見ても北アルプスには両方分布するようだし、花期における外見上での区別は難しいことを考えると、どうも怪しい。なお、以下に掲載するシモツケソウも北アルプスで撮影したものなのでシモツケソウなのか、アカバナシモツケソウなのか不明。ただ不明なのであれば、わざわざ変種名の方で呼ぶのではなく、その母種の名前で呼んでおく方が無難というものだ。



滋賀県・伊吹山のシモツケソウの大群生


シモツケソウの花序。北アルプス・八方尾根(左)と花のアップ。北アルプス・白馬岳(右)。


コシジシモツケソウ。新潟県・苗場山(左)。エゾノシモツケソウ。北海道・雨竜沼湿原(右)。



  
 CONTENTS 
 
   
 

Nature
植物記