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色素を作り忘れたうっかり者?
白花

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 何らかの原因で本来持つ有色色素がなくて白色になった花を白花と呼ぶ。白花が生じる頻度は種類によって違い、比較的よく生じるものもあれば、近年になって初めて発見されたというほど珍しい例もある。また完全に真っ白になるもの、部分的に元の色を残すものなど、白くなる程度もいろいろだ。植物だけでなく動物でも色素を欠いて白色化した個体をアルビノというが、こうした形質は色素合成の酵素を作る遺伝子が欠損したために起こる先天性のものだ。
 そんな白花品には多くの場合は単純に本来の種名の前に「シロバナ」とつけて品種名とすることが多いが、別の名前がつけられることもある。もちろん品種名がはっきりしない場合は、「○○の白花品」と呼べばいいわけだが。
 一方、こうした遺伝性の変異ではなくちゃんとした独立種なのに名前に「シロバナ」とつくものもあるからややこしい。例えばシロバナノヘビイチゴ。確かにヘビイチゴという種類が別にあるが、シロバナノヘビイチゴはヘビイチゴの白花品ではない。そもそも属からして違う。ほかにもシロバナエンレイソウ、シロバナタンポポ、シロバナトウウチソウなども白花品ではなく独立種だ。またシロバナショウジョウバカマはショウジョウバカマの変種だが、ショウジョウバカマの白花品ではない。



カタクリが道の両側に咲き乱れる北アルプス・白鳥山登山道で一株だけ咲いていたシロバナカタクリ

 @  A  B
@シロバナヨツバシオガマ/北アルプス・乗鞍岳。A白花というには色が残っているが、本来の色と比べればかなり薄い。色の薄いミチノクコザクラ/青森県・岩木山。Bツリフネソウの白花品/長野県軽井沢町。

 C  D  E
 F  G  
Cシロバナマツムシソウ/長野県茅野市・八子ケ峰。Dシロバナニシキゴロモ/福島県南郷村。Eシロバナコマクサ/植栽品。Fナガハシスミレの白花品・シラユキナガハシスミレ/福島県南郷村。Gフモトスミレの白花品・シラユキフモトスミレ/静岡県富士宮市・長者ケ岳。


●独立種だが名前に「シロバナ」がつく一例

シロバナノヘビイチゴ/長野県茅野市・北八ヶ岳(左)。シロバナノエンレイソウ(ミヤマエンレイソウ)/長野県軽井沢町(中)。シロバナタンポポ/群馬県笠懸町(右)

  
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植物記