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生態系を守るためには多大な労力が…
帰化植物の除去

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 帰化植物というのは、人間の活動によってもともとなかった外国の植物が国内に進入し野生化した植物のこと。都市部でもそれが増えるのは好ましくないが、山岳地のような自然豊かな場所ではなおさらのこと。だが、最近は登山人口の増加もあって、靴の裏についていた帰化植物の種子が運ばれるなどして、本来、棲息していない山岳地に分布を広げている例がある。尾瀬では登山者によって持ち込まれた帰化植物だけでなく、かつて山小屋が植えたクレソンが増殖するなどの問題も生じている。こうした帰化植物の繁殖は多くの山岳地で見られ、私自身も早池峰山山頂に咲くセイヨウタンポポ、栗駒山山頂直下に咲くシロツメクサ、吾妻連峰の登山道に群生するオオバコなど、多くの例を実見している。ちなみにオオバコは帰化植物ではないから、この場合は移入植物という言葉の方が適切かもしれない。だが、帰化植物の方が圧倒的にさまざまな問題を起こしているのは事実である。

 帰化植物の繁殖は生態系保全に問題があるので、さまざまな対策がされているが、一旦拡大すると、その除去作業はかなりの労力を必要とする。例えば奥日光ではオオハンゴンソウが増えており、8月に黄色の花園を作るので、それはそれで確かに見栄えはあるのだが、これもやはり好ましくない。そこでボランティアを募って除去作業が行われているが、完全に除去するまでには相当な労力が必要と思われる。また尾瀬では、種の持ち込みを防ぐために登山口にマットを敷いて、その上で靴の土を落とすようになっている。その旨の説明看板も立っているので、見ていると比較的多くの登山者が協力しているようだ。同様の処置はほかの人気山岳地でももっと行われてもいい。山岳地で拡大するとその除去作業も大変だ。早め早めの対処が必要ではないか。



武華岳登山口に続く武華岳林道沿いに繁茂するルピナス。北海道北見市


奥日光・湯元スキー場に群生するオオハンゴンソウ。ここだけでなく中禅寺湖畔などにも見られる(左)。栗駒山山頂直下に咲くシロツメクサ。あたりにはかなり多くのシロツメクサが見られた(右)


鳥取県・大山山頂で帰化植物の除去作業をする大山自然科学館の職員の方。国立公園内なので、たとえ帰化植物であっても除去には環境省の許可が必要なのだそうだ。この写真は帰化植物の問題やこうした作業の必要性を伝えるためにお願いして撮らせて頂いたもの(左)。尾瀬・鳩待峠の登山口に設置されている土落としマット(中)。吾妻連峰の登山道に繁茂するオオバコ(右)


  
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植物記