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早春の山を彩る赤花
ヤブツバキとユキツバキ

ツバキ科
Camellia japonica
Camellia japonica 
var. decumbens
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 ヤブツバキといえば、早春に真っ赤な花を咲かせる常緑樹。花が終わるとポトンとそのまま落ちるのもおもしろい。広島の実家裏手にはヤブツバキが多く、毎年花を楽しめる。昔、近くにもヤブツバキが多い林を抜ける小径があった。昼間でもうっそうとして、子供の頃はちょっと怖かった。母がこの道を「つばき道」と勝手に命名して呼んでいたところ、次第に周囲に広がり、何年かした頃には、町内の少し離れたところに住んでいる人も、そう呼ぶようになっていた。その後、この道があった斜面はコンクリートで固められてしまい、ヤブツバキはきれいに伐採されてしまった。道は以前のままだが、随分印象は変わってしまった。その分、見晴らしはよくなったし、防犯上もこの方が好ましいが、あまりにすっきりしてしまったこの道を見る度に、子供の頃のうっそうとしていたヤブツバキの森が懐かしい。こうしたわずかな近所の改変が、全国規模で見ると大きな自然破壊につながっているんだろうな。

 ところでヤブツバキは本州から沖縄まで分布するが、本州日本海側の多雪地には変種のユキツバキがある。ヤブツバキの花糸は白いが、ユキツバキの花糸は黄色い違いがある。また常緑高木のヤブツバキに対して、ユキツバキは常緑低木。雪が多いため幹は地面に対して斜めにのび、半球状の樹形になる。両種の分布が接する地域では、中間的な形態をもつユキバタツバキがあるほか、屋久島にはヤクシマツバキがある。ヤクシマツバキの花はヤブツバキと同じだが、果実は直径6センチ以上にもなりリンゴのように見えることからリンゴツバキの別名もある。



満開になったヤブツバキ。広島市


広島の実家に咲くヤブツバキ(左)と新潟県妙高市で見かけたユキツバキ(右)

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裂開したヤブツバキの刮ハ。中には中軸を中心に種子が並ぶ(左)。屋久島・太忠岳登山道で見つけたヤクシマツバキの大きな果実(右)


  
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Nature
植物記