由来となったタチバナは種名か総称か
クサタチバナ
キョウチクトウ科
Vincetoxicum acuminatum
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APG体系ではキョウチクトウ科カモメヅル属の多年草。従来のクロンキスト体系ではガガイモ科とされた。本州の関東地方以西と四国に分布し、山地の草地や林内に生える。国外では朝鮮半島と中国東北部にも分布している。
漢字で書くと「草橘」で、ミカン科のタチバナに似た花を付ける草という意味。タチバナは日本に自生する3種類の柑橘類のひとつだが、古くは食用になる柑橘類の総称として用いられ、つまりミカンの古名でもある。本種の和名は、果たしてどちらを意識して命名されたのだろうか。どちらもあり得そうだ。ちなみに自生柑橘類の残り2種はコウライタチバナとシークヮーサーである。
茎は高さ30~60センチになり、直立して分枝しない。葉は柄があり、長さ8~15センチの卵形または長楕円形で全縁。対生する。両面にわずかに毛が生える。
6~7月に茎の先にいくつかの花序を出し、径約2センチの白色の花を咲かせる。花冠は5深裂し、内側には淡黄色を帯びる卵状三角形の副花冠が並ぶが、ずい柱よりも少し短い。ずい柱とは、雄しべと雌しべが癒着して柱状になったもので、ほかにラン科などでも見られる。果実は長さ約6センチの袋果で、秋になり熟すと割れて冠毛をもつ種子を飛ばす。

山梨県の釈迦ヶ岳の林内で見かけたクサタチバナ。

花冠の中心に並ぶ三角形の部分が副花冠。群馬県前橋市・赤城山の覚満淵で撮影。
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