図鑑の分布記述は、なぜかバラバラ
クサボタン
キンポウゲ科
Clematis stans
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キンポウゲ科センニンソウ属の多年草だが、茎の下部は木質化するため「半低木」とする図鑑もある。また分布については、図鑑によりなぜか記述が異なり、手元のいくつかの図鑑をざっと確認すると、①北海道と本州、②本州~九州、③本州…など諸説あって、一体どれが正しいのだろう。分類研究の時期的な変遷だけが理由とは思えない食い違いだ。
とりあえず北海道に分布しているかどうか調べるため『新北海道の花』(梅沢俊・著/北海道大学出版会)を開いてみると、本種が掲載され、分布域は「北海道の渡島半島と本州」となっていた。一方、四国と九州には、変種のツクシクサボタン(var.
austrojaponensis )や別種のオオクサボタン(C. speciosa )が分布することは間違いなさそうだが、結局、本種が分布するのかどうかよくわからなかった。『豊の国 大分の植物誌』(荒金正憲先生の自費出版本)など、九州や四国の植物関連資料を見てみたが、クサボタンとツクシクサボタン、どちらも種名が掲載されているものはなかった。
山地の林縁などに生え、高さ1メートルほどになる。葉は3出複葉で、長い葉柄があり対生する。小葉は4~10センチの卵形で浅く3裂し、先はとがる。8~9月に茎の先や葉腋から集散状の花序を出し、淡紫色の花を多数咲かせる。花弁に見えるのは萼片で、4個からなり、基部で合着して細長い筒状になり、先端は反り返る。果実はそう果で羽毛状になる。
名前の草牡丹は、葉がボタンに似て、木なのに草に見えるという意味で命名されたのだろうが、本来は木本というよりも草本とする方がいいと思う。一見しただけでは木本なのか草本なのかわからない、一部だけが木質化する植物は結構あるが、本種の場合は茎の下部が木質化するだけだから、やはり草本と考えるべきだろう。事実、図鑑では「多年草」とするものがほとんどである。
ミヤマハンショウヅルのページで書いたように、本種もセンニンソウ(Clematis)属なので、クレマチス、カザグルマ、テッセンなどと同属である。

長野県富士見町・入笠山に咲くクサボタン。なかなか立派な株だった。撮影は8月下旬。

花弁状の萼片は淡紫色で、先はくるりと反り返る。写真でもわかるが、萼片の外側には微細な絹毛がうっすらと生えている。長野県山ノ内町・信州大学志賀自然教育園で撮影。

頚城山塊の金山で見かけたクサボタン。
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