<<前のページ | 次のページ>>
東北地方ではよくかけるトリカブト
オクトリカブト
キンポウゲ科
Aconitum japonicum 
subsp. subcuneatum
…………………………………………………………………………………………………

 キンポウゲ科トリカブト属の多年草だが、ほかのトリカブト亜属の種類と同様に近年は疑似1年草とされることが増えてきた。塊根(母根)は1年生で、秋には枯れてしまうが、栄養繁殖体の子根を残し、これが翌春に発芽する。そのため広義では多年草に入るのだろうが、厳密にいうと地上部だけが枯れ、地下茎や根は生き残る一般的な多年草とも違うことから疑似1年草とされるようになったと思われる。

 北海道の札幌以南と本州の中部地方以北に分布する北方系のトリカブト。ヤマトリカブト亜種群のひとつ。東北地方では普通によく見かける。茎は高さ60センチ~1.5メートルだが、時に2~3メードルにまで成長する個体もある。生育環境に影響を受けるのか、山岳地の高地草原では斜上し、林縁では垂れたりするが、草原や湿原では直立し、生育場所によって形態が変わる。

 トリカブト属の同定は難しいが、本種の場合は分布域と葉の形態に注目するといい。本種の葉は5~7中裂し、長さ幅ともに8~20センチ。8~10月に散房花序または円錐花序を付け、上から順に開花する。トリカブト属の花のつくりについては、本項植物記「トリカブトのなかま」にヤマトリカブトの花断面写真を掲載してある。

 トリカブトの中でも本種の毒性は世界で2番目に強いともいわれる。ちなみに1番はエゾトリカブトだそうだ。この情報は1990年代に出た図鑑の記述が元になっており、現在のネット上でも同じ図鑑からの引用と思われる記述を多数確認できる。ただ何分、古い情報なので、ひょっとするとその後、世界各地のトリカブト毒性分析が進んで、知見も変わっているのではないかと、今回、いろいろ調べてみたのだが、目新しい情報は確認できなかった。「2番目の毒性」も文献で確認しようとしたが、J-STAGEでも見当たらなかった。

 それはともかくトリカブト属の毒性は、産地によっても変わるとされるが、別の研究では塊根の総アルカロイド含有率は,有意な負の相関関係があるともいう(※1)。また部位によってアルカロイドの含有量も異なり、山形県産オクトリカブトの部位別分析では、根(塊根)が最も多く、次いで蜜腺、花弁、葉の順であったという(※2)。

 蜜腺にアルカロイドが2番目に多かった結果は注目すべき点で、ハチミツを集めるミツバチが、蜜の有毒性を確認しながら集めているわけがない。ということはハチミツにトリカブトのアルカロイドが、知らないうちに含まれていることだって絶対にないとはいえないのではないか。そう思って調べてみると、平成4年(1992)に岩手県で野生ミツバチのハチミツを食べて6名中5名が食中毒を起こした事例が発生していることがわかった。そのハチミツからはトリカブトのアルカロイドであるアコニチンが10ppm検出されたという(※3)。ただ、野生ミツバチのハチミツ利用には注意する必要がある一方で、市販のハチミツからはトリカブトのアルカロイドは検出されなかったという報告(※2)もある。


※1 石﨑昌洋ほか:トリカブトの塊根の大きさとアコニチン系アルカロイド成分含有率との関係および塊根内での成分の分布について,日本作物学会紀事87巻1号,76-82(2018)

※2 笠原義正ほか:野生のトリカブト属植物に含まれるアコニチン類含有量とマウス毒性および加熱による含有量の減少,食品衛生学雑誌54巻5号,364-369(2013)

※3 高田清己:はちみつによる食中毒,食品衛生学雑誌34巻5号,443-444(1993)


関連情報→本サイト植物記「トリカブトのなかま」「エゾトリカブト




晩夏の秋田駒ヶ岳に群生するオクトリカブト。



同じく秋田駒ヶ岳で撮影したオクトリカブト。斜上している点に注目。



10月上旬の函館山山麓で見かけたオクトリカブト。道路沿いの林縁にたくさん咲いていた。いずれも垂れるように茎をのばしていた。


湿原上で直立するオクトリカブト。秋田県鹿角市。八幡平・大場谷地(左)。若い袋果。秋田駒ヶ岳(右)。



  
 CONTENTS 
 
   
 

Nature
植物記