どこまで気遣うかは難しい
植物への配慮
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山岳地の登山道や桟道、道標等の整備において植物、特に樹木に対して、ある程度の配慮がなされるようになったのは、あくまで私の印象に過ぎないが、1990年代の後半か、2000年代に入った頃くらいからだろうか。昔は生きている木の幹に釘で道標が打ち付けられるようなことさえ割とあったが、近年、そうした行為はほとんど見なくなった。また立ち木を切らないように桟道に穴が開けられているのを見る機会も出てきた。最初は「そこまでするか」と少々驚いたものだが、これも普通のことになっていくかもしれない。
トップの写真は、2005年5月に見かけたもの。沼の周囲を巡る桟道途中のテラスにこんな加工が施されていた。これほど大きな木であれば、テラス設置のために切り倒すわけにはいかない、ということだろう。こうした配慮は結構なことだと思うが、元々生えていた植物にどこまで配慮するか、というのは意外と難しい。すべての自生植物に配慮していては、桟道や遊歩道などの工事は不可能になってしまう。可能な範囲でするしかないだろう。

樹種までは見なかったが、かなりの樹齢である。樹木にとって根回りの踏みつけはあまり好ましくないので、テラス設置によって、それを防ぐことにもつながる。栃木県那須塩原市・大沼。
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栃木県日光市・戦場ヶ原にも同様の桟道があった。撮影は2012年。

ガンコウランを避けて植生復元のために敷かれた菰。植生復元のためだから、せっかく生えている植物にダメージがないようにするのは当然。北アルプス・太郎兵衛平。撮影は2000年。

これは、やり過ぎかな。一見すると細い立木にまで配慮しているように見えるのだが、写真左手を見ればわかるように立木に補強材や金属ベルトが固定され、この木にとっては大きな負担になっていると思われる。青森県十和田市・蔦野鳥の森。撮影は2002年。

本文に書いた「幹に釘で打ち付けられた道標」の例。近年でも見かけることは稀にある。釘やワイヤーで複数の道標や看板がコメツガの大木に固定されていた。北アルプス・飛越新道の打保分岐。撮影は2015年。
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