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花だけ見るとバラ科とは思えないが…
ワレモコウ
バラ科
Sanguisorba officinalis
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 バラ科ワレモコウ属の多年草。漢字では「吾木香」あるいは「吾亦紅」などと書き、キク科のモッコウ(木香)と香りが似ているので「わが国の木香」という意味で付けられたともいわれるが、本種にはそんな香りはなく、名前の由来は諸説あるもののはっきりしないという。

 北海道~九州の日当たりのいい山野に生え、高さは50センチ~1メートルほどになる。根出葉には長い柄があり、奇数羽状複葉。小葉は長楕円形で縁には細鋸歯があり、5~13個からなる。8~10月に長さ1~2センチの楕円形の穂状花序を付け、暗赤紫色の花を密に付けるが、花弁はなく4個の萼片が花弁のように見える。雄しべは萼片よりも短く4個あり、葯は黒い。花序の上から下へと開花していく。果実は痩果。 なお、雄しべが長く、萼片から突き出るものをミヤマワレモコウ(S. longifolia )と呼び、北海道の日高地方と本州の秋田県・福島県~岐阜県の湿原に生える。

 古くから知られた植物で『本草和名(ほんぞうわみょう)』や『大和本草』のような専門書だけでなく『源氏物語』や『徒然草』にも登場する。



山梨県の三ツ峠山で8月下旬に撮影したワレモコウ。血を思わせる色合いの花が特徴だが、漢方では止血剤として利用し、属名も「血を吸収する」という意味がある。


ワレモコウの穂状花序。上半分は開花しているが、下半分はまだ蕾。9月初旬の霧ヶ峰で撮影(左)。ミヤマワレモコウ。雄しべが本種よりも長く、萼片から突き出るのが特徴。尾瀬ヶ原で撮影(右)。



  
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