8割以上が在来種との雑種といわれる
セイヨウタンポポ
キク科
Taraxacum officinale
…………………………………………………………………………………………………
キク科タンポポ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。日本全国の道端や公園、空き地など、都市部ではどこにでもある雑草だが、在来種よりも繁殖力が高く、環境省による「生態系被害防止外来種(※)」、また日本生態学会による「日本の侵略的外来種ワースト100」にも選定され、あまり好ましくない植物ともいえる。
本種の繁殖力が高い理由としては、花期がほぼ1年中で、しかも3倍体なので単為生殖で種子を作れることなど、複数の理由が挙げられる。そのため在来種を駆逐して全国で爆発的に分布を広げ、かつて在来種と本種との生存競争を「タンポポ戦争」と呼んだ時期もあるが、実はそう単純ではなく、日本に分布する本種のうち8割以上は両者の雑種との研究もある。かつて両者の区別方法は総苞外片が反り返るか否かがポイントとされてきたが、雑種も反り返るらしいので、区別は難しそうだ。本項では、とりあえず総苞外片が反り返るものを本種と見なして紹介するが、厳密にいうと「本当のところはわからない」である。
タンポポの分布調査では、2005年をピークに本種などの外来種が減り始め、在来種が盛り返しているところもあるそうだが、その一方で総苞外片が反り返らない在来種とは異なるタイプが関東地方などで確認されており、交雑や新たな外来種の侵入など、タンポポを取り巻く実態については、まだまだ未解明な部分が多いといえそうである。
※生態系被害防止外来種リストを見ると、セイヨウタンポポではなく、ほかの外来種も含めて「外来性タンポポ種群」として選定されている。

長野県白馬村の空き地を覆うほどに繁殖したセイヨウタンポポ。好ましくない雑草とはいえ、ここまで群生すると、景観的にはなかなか見事ではある。撮影は5月下旬。

長野県東御市(撮影時は東部町)の県道沿いに咲いていたセイヨウタンポポ。撮影は5月中旬。
頭花の直径は4センチ前後で、黄色い舌状花(ぜつじょうか)を多数咲かせる。小花はすべて舌状花で、ほかのキク科植物のような筒状花(とうじょうか)はない。先が二またに分かれている部分は雌しべ(左)。その雌しべを拡大してみた。たくさんの花粉が付着している(右)。
頭花の断面。白い毛は冠毛で、萼にあたる。小花の基部にある楕円形の部分は子房。子房はやがてそう果となり、冠毛が開いて、飛びやすくなる。子房下の切断面からは白い乳液がしみ出しているが、これは虫による食害を防ぐ作用があるともいわれる(左)。反り返る総苞外片。在来種は反り返らないので、本種とのわかりやすい区別点だったが、近年の研究でそうとも断言できなくなっている(右)。
 |
冠毛が開いたそう果は、風によって飛ばされ、新たな地で芽生え繁殖する。冠毛付きそう果の重さは、カントウタンポポが0.8~1mgなのに対して、本種はその半分の重さしかないという。つまり本種の方が、より遠くに飛びやすく、それだけ繁殖力が高いことを意味する。そう果には刺状の突起があり、地面に落ちた際にひっかかりやすくなっている。以上5点の撮影地は東京都世田谷区や埼玉県小鹿野町など。 |
|