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春の七草だが、実は帰化植物
ハハコグサ
キク科

Pseudognaphalium affine
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 キク科ハハコグサ属の1年草または越年草。全国の道端や畑などにごく普通に見られ、春の七草のひとつにも数えられるほど、日本人にとって身近な野草だが、実は自生種ではなく、古代に中国か朝鮮半島から入ってきて定着した帰化植物と考えられている。

 漢字では「母子草」で、オギョウと呼ばれることもある。全草が綿毛に包まれ、花の冠毛もほおけ立つことから、古くはホオコグサと呼び、それが転訛したとする説もあるが、すでに平安時代前期にまとめられた『文徳実録』(879年)には、「母子草」の記載があるらしいので、ハハコグサの名前もかなり古いことになる。

 高さ15~30センチ。綿毛のために全体が白っぽく見える。茎葉はへら形。根生葉は花期には枯れる。4~6月に茎先に黄色の小さな頭花を多数付ける。果実は冠毛が生えた長楕円形のそう果。

 ところで今回、記事を書くために複数の図鑑に目を通すと、「多年草」「越年草」「1年草」と記述が異なっていた。どれが正解だろうか。非常に身近な野草なのに、その生活史さえ、専門家によって見解に相違があるということなのか、それとも単なる記述ミスか、校正もれか。『神奈川県植物誌』(神奈川県立生命の星・地球博物館/2001)には「1~越年草」とあったので、とりあえず本記事ではこれを採用した。




4月中旬。広島県三原市の道端で見かけたハハコグサ。 ある図鑑には「本種の花の黄色はアキノハハコグサ以外の近縁種では見られない特徴」とあった。



やはり道端に群生していたハハコグサ。栃木県栃木市。


頭花。中心には両性花があり、縁には雌花が取り囲む(左)。茎を拡大してみた。白い綿毛でびっしり覆われている。綿毛は害虫防御のためともいわれる(右)。撮影地はどちらも東京都世田谷区。


若個体。花芽がないうちのものを採取して山菜として利用する。古くは草餅といえばヨモギではなく、本種の若芽を使っていた(左)。我が家に自生するハハコグサ。今日現在の状況はこんな感じだった。果実になり、冠毛が開きかけていた。手でしごくとパラパラと分離して出てきた(右)。左の撮影地は山梨県大月市。



  
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植物記