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母種よりも葉の切れ込みが浅い
オクモミジハグマ
キク科
Ainsliaea acerifolia 
var. subapoda
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 キク科モミジハグマ属の多年草。基準標本の産地は、意外にも北朝鮮の平安北道。漢字では「奥紅葉白熊」。「白熊」とは、インドや中国などにいるウシ科の動物・ヤクの尾の毛で作った飾りのことで、武士が使う槍や兜、采配、あるいは僧侶が使う払子(ほっす)などに付けられる。花冠の細長い裂片をそれに見立てた名前。

 本州の東北地方~山陰地方と九州北部に分布。山地の肥沃な林内や林縁に生える。高さ40~80センチ。茎には長毛がまばらに生え、その中部に4~7個の葉がやや輪生状に付く。葉身は長さ6~12センチの腎心形または円心形で、縁は掌状に7浅裂~中裂。鋸歯があり、両面にはまばらに軟毛がある。
 8~10月に3個の筒状花からなる頭花を多数穂状に付ける。頭花の花冠は白色。通常は5裂し、裂片はよじれる。果実は痩果。

 母種のモミジハグマ( A. acerifolia )は、本種よりも葉がより深く切れ込み、本州関東地方以西の太平洋側、四国、九州に分布する。その分布の境界にあたる長野県には、両種の中間的な個体も見られるようだが、県内のものはすべて本種と判明しているらしい。



花序に付く花の数は個体によっていろいろ。少数がパラパラとしか付かないことも多いが、群馬県中之条町の山林で見かけた本種の群落では、写真のように立派な花序を付けた個体が多かった。



頭花は3個の小花からなり、ひとつひとつの小花の花冠が、それぞれ左右相称で5裂するので、頭花全体では、約15もの線形裂片が放射状にのびることになる。よじれる向きは一定かどうか不明だが、この写真の花序では頭花のすべてが同じ方向によじれていた。群馬県中之条町。



  
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植物記