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「菱形」の由来となった
ヒシ
ヒシ科
Trapa japonica

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  ヒシ科ヒシ属の一年草。北海道~九州の中~富栄養水域の池沼に生え、葉が水面に浮く浮葉植物。漢字では、「菱」と書く。果実の形から「押しつぶす」意の「拉ぐ(ひしぐ・ひさぐ)」からヒシと呼ぶようになった等、諸説ある。
 水底に沈んだ果実から発芽し、茎をのばして枝を分け、水中で沈水葉を出し、水面には浮葉を広げる。浮葉はロゼット状で、輪生しているように見えるが互生である。葉身は卵状菱形または丸みがある三角状。この形から「菱形」と呼ばれるようになったともいわれる。葉柄は長いもので約18センチもあり、中央が膨らんで浮嚢の役目を担う。
 7~9月に葉のわきからのびた花茎の先に直径1センチの白い花が1個付く。花弁と雄しべは4個。雌しべは1個。果実は、横から見ると菱形をしており、4つの萼片のうち2つが鋭い刺として発達しているのが特徴で、食用になる。

 果実に4本の刺を持つものは、オニビシ( T. natans var.japonica )、同じく果実には4本の刺があるが、小さく、花も小型で白色~淡桃色のものをヒメビシ( T. incisa )という。




福島県会津若松市で見かけた、池の水面を覆うヒシ。ロゼット状の浮葉で、少し遠目に見てもヒシとわかる。



ヒシの花。浮葉の膨れた葉柄にも注目。この膨らみ方は変異があって、著しい個体もあれば、ほとんど膨らまないものもあるそうだ。佐賀県唐津市。


  
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植物記