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日本で最も普通に見られるスミレ
タチツボスミレ

スミレ科
Viola grypoceras

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 スミレのなかまは多いが、日本で最もよく見かけるのがタチツボスミレ。私の印象としては、スミレよりも多いような気がする。海岸から亜高山帯まで現れ、草原や林、道端など、日当たりがよければいろいろな場所に生育し、時には見事な群生を見せてくれることもある。薄紫色の花、ハート型の葉が特徴の、春の山野を彩る身近な野草のひとつといえよう。

 タチツボスミレには、よく似たなかまがいくつかある。品種として白花のうち、距まで白くならず紫色が残るオトメスミレや葉脈に赤紫色の斑が入るアカフタチツボスミレがある。また変種としてはコタチツボスミレや渓流沿いに生えるケイリュウタチツボスミレ、茎がつる状になるツルタチツボスミレがある。オトメスミレやアカフタチツボスミレはたまに見かける。またケイリュウタチツボスミレは、かつて群馬県内の渓流沿いで見かけた。初めタチツボスミレと思ったが、花はほっそりとしており、ちょっと違うと感じた。特に距が白いのが印象的だった。帰宅して調べてみてケイリュウタチツボスミレとわかった。




どこにでもあるような印象があるタチツボスミレ/広島県安芸太田町。



春の林床を覆うタチツボスミレ/福島県福島市・仁田沼。



花の断面。唇弁の距の中にある出っ張りは雄しべの距/埼玉県小鹿野町。雌しべの周囲を取り囲む橙色の部分は雄しべの付属体。付属体の基部にある白い部分が葯。


花のアップ。側弁は無毛だ/埼玉県小鹿野町(左)。櫛の歯状に切れ込む托葉/長野県大町市(右)。


タチツボスミレの品種・オトメスミレ(左)。ケイリュウタチツボスミレの距(右)。


  
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Nature
植物記