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秋に咲くサルビアのなかま
キバナアキギリのなかま

シソ科
Salvia

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 キバナアキギリは、本州から九州にかけて分布するシソ科アキギリ属の多年草。属名を見ればわかるようにサルビアのなかまである。赤紫色の花柱が花の外に飛び出した黄色い唇形花をつけ、葉の基部はほこ形。関東地方では晩夏〜秋の山でよく見かける。
 ところでなかまとしては長野県と群馬県に分布するシナノアキギリ、中部地方〜近畿地方にはアキギリがある。前者はキバナアキギリとよく似ているが、葉の基部がほこ形にならず見分けは容易。茎に腺毛が多いのも特徴だ。一方、後者は葉はやはりほこ形だが、花が紫色なので違いは明瞭。本種が秋に桐の花に似た紫色の花をつけることが「秋桐」の名前の由来だ。

 このなかまの花はおもしろいしくみを持っている。雄しべはちょうどひらがなの「つ」のような形をしており、真ん中を支点としてシーソーのように動く。そして上の端に葯があり、下の端には退化した葯がある。訪花昆虫が花の中にもぐりこんで退化した葯を押すと、シーソーが動いて上の葯が昆虫の身体に押しつけられるしくみになっている。つまり、よく確実に昆虫の身体に花粉を託するしくみというわけなのだ。



8月下旬、山梨県の三ツ峠山に咲くキバナアキギリ。花を見れば、色違いというだけでサルビアとよく似ていることがわかる。



新潟県阿賀町の道路沿いに黄色い帯を作るキバナアキギリ。こんなに群生するのは、初めて見た

シナノアキギリ/妙義山(左)とアキギリ/箱根湿生花園・植栽(右)。



  
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植物記