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高尾山の名前がついた
タカオスミレ
スミレ科
Viola yezoensis 
f.discolor
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 東京都八王子市にある高尾山は、首都圏の登山者やハイカーなら知らぬ者はいない有名な山。明治以降、植物の調査研究もさかんで、ここで発見命名された植物は約60種類に及ぶという。もちろん高尾山の名前がつけられた植物もいくつかあり、その代表格がこのタカオスミレ。ヒカゲスミレの品種で、葉が紫褐色になるのが特徴だ。
 高尾山で最初に採取されたので、この名前があるが、ほかの地域にも自生している。高尾山では1号路などで見られるが、個体数はそれほど多くはない。

 下の写真は、もうかれこれ十年近く前に撮影したもの。本種の撮影を目的に取材の帰りに高尾山にちょっと立ち寄った。1号路にあるということは知っていたので、早速道沿いを探し始めたのだが、なかなか見つけられない。さらに探してようやく数株見つけたのだが、どれも1株に花をひとつしか付けておらず、あまりパッとしない。困ったなぁ。きれいな株がどこかにないかなぁと思っていると、自然観察会なのだろう。講師とおぼしき男性が、十人くらいの参加者を伴ってやってきた。講師は高尾山の植物について解説していたが、やがてタカオスミレの話になった。耳をそばだてて聞いていると、「それではですね。そのタカオスミレをご覧頂きます。今年はあまりたくさん咲いていませんが、ここにきれいな株があるんです…」みたいなことをいっている。彼らは私がまだ探していなかった付近で立ち止まり、全員で腰を屈めて覗き込んでいた。
 一行が立ち去ったあと、そこへ行ってみると、花を二輪つけた株があるではないか。おお、素晴らしい。自然観察会ご一行様との絶妙なタイミングでの出会いを高尾山の山の神に感謝しつつ、喜んで撮影したのであった。



独特の色をした葉を広げるタカオスミレ


 
  
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