<<前のページ | 次のページ>>
例外的な生育地に群生していた
エゾエンゴサク
ケシ科
Corydalis ambigua
…………………………………………………………………………………………………

  北海道から中部地方の日本海側に分布するケシ科キケマン属の多年草。高さ10〜20センチ。葉は3小葉からなるが、小葉の形は変化が多い。よく似たヤマエンゴサクの苞は、歯牙や欠刻があるのに対して、本種は全縁となる違いがある。4〜5月に長さ2〜2.5センチの距が長い筒状の花を総状に咲かせる。花の色は、もっぱら青紫色が多いが、時には赤紫色のものも見られるようだ。

 写真は、新潟県妙高市で見かけたエゾエンゴサクだが、同定は少し迷った。図鑑によっては、分布域を「東北まで」とし、あるいはめくったすべての図鑑において「林内や林縁に生える」もしくはそれに近い記述がされ、「草原」と書かれたものはひとつもなかったからである。現場は牧場内の草原で、明らかに生育地としては例外になる。ここでは写真のような群生があちこちに生じ、しかも初めて見るようなスゴイ密度で咲きまくっていた。牛が食べないので増えたとか、牧場という人為的環境に要因がある可能性もありそうだ。

 もともとエゾエンゴサクの葉の形態や花の色には変化が多いようなので、決め手に欠いた。実は過去、近くの林内でヤマエンゴサクを見かけたこともあったので、余計に迷ったのだが、苞の形態から最終的に本種とした。



残雪の山を背景にものすごい密度で群生するエゾエンゴサク。ここの花は、赤みが強かった。



先端だけ青紫色で距の方はやや薄い花(右)と距が紫色の花(左)。



完全に赤紫色の花を付ける株も点々と見られた。青紫色のエゾエンゴサクと比較すると、別種に見える。



  
 CONTENTS 
 
   
 

Nature
植物記