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日本人が初めて学名を付けた
ヤマトグサ

ヤマトグサ科
Theligonum japonicum

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 国内に自生する植物であっても日本人が新種として学名を付けたこともなかった明治時代。在野の植物研究家・牧野富太郎によって、初めて新種として学名が付けられた植物が本種である。 ようやく日本の植物学が黎明期を迎えたことを証明する第一歩であり、おそらく牧野もそれを記念する意味を込めて「大和草」と命名したのだろう。明治20年に植物学雑誌で報告された際は Theligonum sp.だったが、その翌々年には正式な学名が付けられている。
 ヤマトグサ科ヤマトグサ属の多年草で、日本固有種。関東地方以西の本州と四国、九州に分布する。雌雄同株で雌雄の単性花に花弁はなく、反り返った3個の萼片が目立つ。雄花は多数の雄しべが垂れ下がり、雌花には曲がった花柱があるだけなので、見栄えはまったくしない。また葉柄基部には膜質の托葉がある。
 丹沢山地・ヤビツ峠は、本種の自生地のひとつで、かつては峠の両側斜面に広く見られたそうだが、県道のブロック擁壁整備などもあって現在はごく限られた場所に少数の株が生えるだけになってしまった。ヤビツ峠における本種の開花時期は、5月上旬〜中旬だが、よほど注意深く探さないと見つけるのは難しいだろう。関東地方では、ほかにも南足柄市の夕日の滝にもあるそうだが…。


典型的な草姿とはいえないが雄花を付けた株(左)。多数の雄しべが垂れ下がる雄花。右上は蕾(右)。どちらも神奈川県秦野市・ヤビツ峠にて。


  
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植物記