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「因幡の白兎」のキズを治した植物
ガマ

ガマ科

Typha 
latifolia
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 まるでソーセージのような果穂(花穂)が、ユニークなガマ科ガマ属の多年草。池や沼、川べりなどに生え、北海道〜九州に分布する。高さは1.5〜2メートル。
 
古事記、日本書記、和漢三才図絵などの古文献にも記述が見られる植物で、日本神話のひとつ「因幡の白兎」にも出てくる。大国主命は、和邇(わに)に皮をはがされたウサギに、真水で身体を洗い蒲黄(ほおう)の上で寝なさいとアドバイスする。ウサギが、いわれた通りにするとキズは直ったという。蒲黄とは、本種の花粉のことで、古くから止血薬として利用されていた。また穂綿を火おこしの火口にしたり、松明の代用にもしたという。さらには穂綿を集めて入れたので、蒲団(ふとん)と書くようになったそうだ。
 ソーセージのような部分は、雌花序。そのすぐ上にあるのが雄花序である。ガマは、雌花序の長さが10〜20センチもあるが、コガマ(T. orientalis のそれ)はその半分(6〜10センチ)しかない。またガマもコガマも雌花序と雄花序が接しているが、少し離れているのがヒメガマ(T. australis )だ。なかまどうし似ているので一見すると区別がつかないが、この違いを覚えておけば間違うことはない。



ガマの果穂。新潟県柏崎市




ガマの花穂。雄花序にはまだ花粉がたっぷり。外れかけた苞も見える。長野県山ノ内町

ガマよりも小型のコガマ。埼玉県東松山市



  
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植物記