<<前のページ | 次のページ>>

その姿形といい、多肉質の葉といい、ユニークな植物である。多肉質の葉をもっているということは、乾燥に強い証拠で、だから石垣のような場所でも平気なのだ

ユニークな姿形をした
ツメレンゲ
ベンケイソウ科
Sedum erubescens
………………………………………………………

 なんとも個性的な姿である。葉の間から花茎をのばし、小さな白い花を多数密につける。しかも葉はベンケイソウ科らしく多肉質。知らない人が見たら、どこか外国産の珍しい植物と勘違いしそうである。
 名前は「爪蓮華」で、尖った葉を爪に、葉が重なり合う様子を蓮華(ハス)に見立てたもの。よく似たなかまにイワレンゲがあり、本種よりもやや大きく、葉の先はあまり尖らない違いがある。どちらも暖地に生える。
 ツメレンゲは、この写真を撮影した時が、私にとっての初見であった。場所は長野県南部、南アルプス山麓の山里でのこと。山間部の狭い道路を車で走っていて、道路わきの石垣にびっしりと生えたツメレンゲに気づいた。この時は、取材先に向かう途中だったので、帰路に撮影することにして通り過ぎる。ところが、取材を終えて戻るときに、すっかりツメレンゲのことを失念。かなり先まで進んで、ようやく気づいた。時間をかけて戻るか諦めるか迷ったが、結局Uターンすることに。わざわざ戻ったのに間近でじっくり見ると、ほとんどの個体はまだ蕾の状態で、開花していたのは、写真のような小さな個体だけだったが、それでも一応、未撮影種がひとつ減った。


  
 CONTENTS 
 
   
 

Nature
植物記