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花の中に蛍を入れて遊んだから?
ホタルブクロとヤマホタルブクロ

キキョウ科
Campanula punctata
Campanula punctata 
var. hondoensis
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 初夏、山裾の斜面などで鐘形の花を重そうにつけているホタルブクロを見かける。キキョウ科ホタルブクロ属の多年草で、漢字では「蛍袋」と書くことが多く、子供が花を袋にしてホタルを入れて遊んだことに由来するともいわれている(ほかの説もある)。またボンボンバナやチョウチンバナなどのユニークな地方名があるのも、それだけ身近な野草として親しまれてきた証拠だろう。6〜7月、細かな斑点がある長さ4〜5センチの白色または淡紅紫色の花をつけるので、よく目につく。
 ところで山地にはホタルブクロの変種・ヤマホタルブクロがある。よく似ているが、萼をよく見れば簡単に見分けがつく。ホタルブクロには萼片の間に上向きに反り返った小さな付属体があるが、ヤマホタルブクロの萼にはこれがなく、わずかなふくらみがあるだけ。

 ホタルブクロといえば、小学校低学年の頃、初めて見た時のことが、今も鮮明に記憶に残っている。夏休み前のすがすがしい朝のこと。一緒に通学していた近所の同級生の家から下っていく小径に、ある日、ホタルブクロが白い花を咲かせていた。その頃、夢中だったのはカブトムシなどの昆虫採集で、野草の花にはまったく関心なし。それでも物珍しかったことも手伝って、その清楚な雰囲気に「なんてきれいな花だろう」と感じたことを覚えている。でも本当はホタルブクロなのか、ヤマホタルブクロなのか定かじゃないんだけど。



ホタルブクロ/大阪府泉佐野市。



ヤマホタルブクロ/長野県野沢温泉村。


萼の違い。萼片から上向きに反り返る付属体(赤矢印)があるホタルブクロ(左)と、ふくらみがあるだけのヤマホタルブクロ(右)。



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