Nature
  
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一種一種、植物を取り上げて、その植物にまつわる話題を写真とともに紹介します。

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植物記
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山の斜面を燃え尽くす炎のように大群生する
レンゲツツジ

ツツジ科
Rhododendron molle 
var. glabrius
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 レンゲツツジは高原や山でしばしば大群生を作るツツジ科ツツジ属の落葉低木。本州〜九州に分布するが、長野県の高原には特に多く、信州の初夏を代表する花といってもいいかもしれない。県内では花の色から赤鬼を連想してオニツツジと呼ばれ、民謡にも歌われ親しまれている。

 さてレンゲツツジ群生地といえば、長野県内では松本市の美ヶ原高原、須坂市の五味池破風高原自然園、県外では群馬県片品村の武尊牧場などが挙げられるが、こうした場所は、なぜか牧場や放牧地ばかりだ。これはどういう理由によるのだろうか。
 実はレンゲツツジは有毒植物で、葉にはアンドロメドトキシン、花にはロドジャポニンと呼ばれる毒成分が含まれ、蜜を舐めただけでも呼吸困難に陥ることもあるほど。牛たちは毒が含まれているのを本能的に察知して(時には食べてしまうこともあるらしいが)、これを敬遠する。その結果、牛たちがエサとして食べる草木を抑えて増えていったというわけだ。つまりレンゲツツジ群生地は、牛によって作られたといっても過言ではないのである。最近、放牧が減った群馬・長野両県にまたがる湯ノ丸高原では、逆にレンゲツツジ群生に衰退の兆しが見え始めているともいわれる。

 牛によって作られ、牛によって維持されてきたレンゲツツジ群生地。今や観光地としての人気も高いが、今後の存続は牧畜業の先行きとも決して無関係ではない。放牧がなくなればレンゲツツジは次第に減っていき、やがてはほかの樹木が侵入して様相が一変するかもしれない。

 花の色は淡い橙色のものから真紅のものまで変化があり、同じ群生地内でも個体による色違いが見られる。果実は長さ2センチほどの刮ハ。秋になると赤や橙色に紅葉するので美しい。また黄色い花をさかせる品種・キレンゲツツジ(f. flavum)は、観賞用に庭などに植えられる。
 なお落葉性のツツジに対して、葉に光沢があり常緑のものを総称してシャクナゲと呼んでいるが、分類学上は同じツツジ属に含まれる。確かに花はよく似た形をしており、シャクナゲもツツジにごく近いなかまといえる。



長野県須坂市の五味池破風高原を橙色に染めるレンゲツツジの大群生。


レンゲツツジの花。花冠は直径5〜6cmの漏斗形で、先は5裂。雄しべは5個。群馬・長野県にまたがる湯ノ丸山にて(左)。庭などに植えるキレンゲツツジ。大分県に自生地があり、県の天然記念物に指定されているが、広く栽培もされている。写真は新潟県で撮影した栽培品(右)。


枝先に2〜8個のつぼみを出す。名前はこの様子を蓮華に見立てたもの。長野県・立原高原(左)。葯に細い枝でそっと触れると、糸で綴られた花粉が、おもしろいようにぞろぞろと出てくる。花粉には粘り気があるので付着するのだ。長野県・陣馬形山(右)。