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木が分泌する物質
樹脂・松脂

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 樹木の幹から樹液とは違う粘度の高い物質が分泌され、時にはそれが固っているのを見かけることがある。特に針葉樹に多いようだが、広葉樹にもある。これは樹脂と呼ばれ、木が自らの傷を保護したり昆虫の食害を防ぐ役目があるともいわれている。樹脂細胞が作った樹脂は、樹脂道に満たされ、いざ傷を負うと、人間の血液と同じように流れ出して固まり傷を保護する。
 主に不揮発性の精油や有機酸などからなり、松脂(まつやに)もその一種。さらに樹脂が地中に埋まって化石化したものが琥珀(こはく)だ。流れ出た樹脂は、時に虫などを捕らえて化石になっていることも多く、琥珀の中で太古の昆虫をそのまま観察できることもある。樹脂は古代エジプトの時代から香料や薬用などに用いられ、現代でも松脂は工業原料などに幅広く利用されている。一方、合成樹脂とは、天然樹脂に対して化学的に合成して作り出したもの。

 小学生の時、広島の海水浴場でマツ(たぶんアカマツ)の幹に大きな松脂が固まっているのを見つけて、剥がしとって大切に持ち帰った。長さ幅ともに3センチ前後はあろうかという大きさで、しかも、きれいな水滴型に固まっていた。そばにいた父が何であるか教えてくれ、珍しいものとばかりに以後、自分の宝物にした記憶がある。あの松脂、絶対に捨てていないと思うのだが、さてどこに保管したか。新たに探そうと思えば、あのくらいの固まりは見つけられそうな気もするのだが、何分、思い出の品でもあるのでちょっと気になる。それに、あれから30余年。そろそろ琥珀になっていてもいい頃だと思うんだけどなぁ(笑)。そんなワケないか。



ソメイヨシノの幹から出て固まった樹脂。まさに琥珀色をしている。広島市



幹の表面に線状に固まった白い樹脂があった。ほとんど固まっていたが、手に付いた一部を嗅いでみると、針葉樹らしい、とてもいい香りがした。長野県木曽町・御嶽山中腹。


上の写真と同じ木の樹脂(撮影時期は別)だが、この時はなぜか濁っていた(左)とカラマツから流れ出した樹脂(右)。色はこのような黄色や白色のこともあるし、茶色のこともある


琥珀の例。右の琥珀は第3紀のもの。中央の琥珀には化石化する前に飲み込まれたアリの死骸が多く含まれている。左は装飾用に加工されたもの。左・中=マダガスカル産。左=ロシア産。(以上3点とも日野化石コレクションから)


  
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植物記