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日本産香辛料とそのなかま
ワサビとユリワサビ

アブラナ科
Wasabi japonica
Wasabi 
tenuis
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 ワサビはいうまでもなく、香辛料として利用されるアブラナ科ワサビ属の多年草。属名の由来は説明するまでもなかろう。長野県や静岡県などで栽培されているが、もともと北海道〜九州の山地の渓流に自生。ただ自生品は根茎が細くて小さいので利用は難しい。
 鼻につんとくる香りと辛みは、いかにも日本的。ただ近年はヨーロッパなどを中心とした寿司人気に伴って、ワサビも広く利用されるようになってきたそうだ。この辛み成分には殺菌作用があり、魚の寄生虫を殺す効果もあるとか。ただ市販のチューブ入りの練りわさびには、ワサビではなくホースラディッシュともいわれる西洋わさびを着色して使用している場合もあるようだ。

 一方、同じワサビ属の多年草にユリワサビがある。こちらは湿っぽい礫地に生え、全体にワサビより小さいが、葉を採取してもむと、ワサビの香りが広がり、葉や茎をワサビ同様に利用できる。花もワサビに似た白色の4弁花。ワサビとユリワサビの花期はどちらも3〜5月。名前は「百合山葵」で、地上部が枯れたあと、ふくらんだ葉柄の基部がユリの鱗茎に似ていることから命名されたもの。


長野県内の山で見かけた野生ワサビ(左)。ユリワサビ。東京都・高尾山にて。ユリワサビの茎はやや斜めに立ち上がるので、この写真は典型的とはいえず、あまりよくないが、ほかに適当なのがなかったので掲載。ワサビと葉の形の違いに注目(中)。ユリワサビの花アップ(右)。


ワサビ田(左)と栽培品のワサビ(右)。長野県・大王ワサビ農場にて。



  
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植物記