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初夏の深山に咲く清楚な花
サンカヨウ

メギ科

Diphylleia grayi
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 サンカヨウとはどういう意味だろうと思ってしまうが、漢名「山荷葉」に由来とされる。一方、荷葉とはハスの葉のことで、山にあるハスの葉という意味で命名されたとする説もあるらしい。そもそも「山荷葉」は本種の漢名ではないという。
 2枚の茎葉がつき、上の葉は無柄で、下の葉は楯状につく。両方とも基部が切れ込み縁には不揃いの欠刻状鋸歯がある。花は径2センチほどで、白い花弁状のものは萼片で6個からなる。萼片は外側と内側に2輪あり、花弁状のものは内萼片にあたる。また果実は長さ1センチの楕円体で藍色に熟す。色といい白粉を帯びる点といい、ちょっとブルーベリーのよう。私は食べてみたことはないが、少し甘酸っぱくておいしいという。
 葉も花も上部にまとまり、何となく不安定そう。だが見慣れてくると、それはそれでデザイン的にバランスがとれているとも思えてくる。そういう意味ではユリ科のエンレイソウも同じだ。
 葉の形態には変化が多く、キレハサンカヨウ(f.incisa)やマルバサンカヨウ(f.rotundata)などの品種が知られる。



少し水滴もまとった花に巡り会えれば、その清楚さに心も癒される。まさに深山の花という感じだ。北アルプス・栂池自然園にて。


葉が展開する前は、まるで誰かがイタズラで葉をぎゅ〜と絞ったみたいな感じの、ぐちゃぐちゃ状態で草丈をのばしてくる。当然花は蕾の状態(左)。まだ緑色をした若い果実(中)。熟すと藍色になり、「山ぶどう」と呼ぶ地方もあるそうだ(右)。



  
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植物記