<<前のページ 次のページ>>
独特の存在感がある高山植物
クロユリ

ユリ科
Fritillaria camtschatcensis
…………………………………………………………………………………………………

 本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の草原に生える多年草。花は黒というよりも黒っぽい紫褐色で、ややうつむき気味に咲くので見えにくいが内側には細かな網目模様がある。その姿からはいい香りを期待してしまうが、現実に嗅いでみるとがっかりするかも。悪臭とまではいえないが、独特の「臭い」を漂わせている。ちなみにユリ属ではなくバイモ属なので、名前にユリと入っているものの実はバイモのなかまだ。

 少し昔までは本州高山帯のものをミヤマクロユリ、北海道の低地にものをクロユリ(エゾクロユリ)に分けていた。前者は2倍体、後者は3倍体とされていたが、実は北海道の低地には2倍体、3倍体が混生していることから最近は同一種とする見解が主流になってきたようだ。事実、最近の図鑑はまとめてクロユリとして掲載しているものが圧倒的に多い。

 写真はクロユリが多いことが由来である八ヶ岳の黒百合平で撮影したもの。昔はかなりの数が自生していたらしいが、現在はポツポツとしか咲かないのは残念だ。だが、それでもクロユリの独特の存在感を確かめることはできるだろう。



北八ヶ岳・黒百合平に咲くクロユリ。葉は茎の中部で輪生する。


  
 CONTENTS 
 
   
 

Nature
植物記