これまで聞いた話や読んだ話の中から、特に不思議に感じる話、怖い話を選び出してみた。


山
譚
Nature
岳
奇
私が体験した話
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山に住む人々?


 昭和30年代に刊行された『狩猟伝承研究』という本は、動物学・民俗学に造詣が深い元信州大学教授・千葉徳爾先生が書かれた猟の伝承などをまとめた本だが、この本の中には実際に猟師が体験した不思議な目撃談も紹介されている。
 九州の天神原山で、ある猟師(本の中では実名表記)が夜打ちのために潜んでいると、いきなり目の前に若い女性の黒い影が彼に向かって立ったという。ちょうど月に照らされて笹原が輝いていた時だったので、影の輪郭までよく見え、あまりの恐ろしさに息を殺していると、やがてその人物は姿を消したという。
 もうひとつ。これはまた別の猟師(本の中では実名表記)が目撃した体験談もある。新百姓山の笹原を望む場所で、昼間、休憩していると、緑色をした子供のようなモノが、人の肩くらいの笹原を立ち、あるいは座るようにしながら横切っていったという。向こうは、こちらには気づかなかったらしいが、猟師という職業柄、サルなどの動物は非常に見慣れているはずで、動物と見間違うとは思えない。どちらも不思議な目撃談である。
 後者の方は謎としかいいようがないが、前者の方は、山窩のように山で暮らす人だった可能性も考えられる。柳田国男は、著書の中で山窩とは異なると思われる山に住む人々についても触れており、山で暮らす一団といえば、必ずしも山窩とはいえないようである。
 先の『狩猟伝承研究』は、神田の古本屋で探せば見つかると思う。興味がある人は、読んでみてはいかがだろうか。



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