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独特な進み方がおもしろい
シャクトリムシ

Pylargosceles steganioides (フタナミヒメトビシャク)
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 シャクトリムシといえば、あの独特の動きをする幼虫。まるで人間が親指と人差し指で尺をとるような進み方をするので「尺取り虫」。シャクガ科の幼虫に共通するので、シャクトリムシと総称されているが、いくつかの種類があるらしい。
 通常、幼虫には本来の脚とは別に腹脚や尾脚と呼ばれる脚があるが、シャクガ科の幼虫は腹脚が退化しているのが特徴。そのため身体の構造上、どうしても尺を取るような動きにならざるを得ないわけである。

 山を歩いていると、いつの間にか上空の枝から落ちてきたらしいシャクトリムシが服に付着し、勝手に服の寸法を取られたことが何度かあるが、見つけ次第、指ではじき飛ばして排除するばかりで、じっくり観察してみたことはなった。
 ところが、先日たまたま実家のサンショウにシャクトリムシがいるのに気づき、せっかくなので観察させてもらった。サンショウの枝に尾脚で身体を固定にして直立不動。小枝にうまく擬態して、遠目に見るとサンショウの小枝にしか見えない。どんな反応をするだろうと、少し触ってみると触った反対側に身体を曲げて、まるで風を受けて小枝が揺れているかのように身体を小刻みに揺らしていた。
 さらにピンセットでつまみ上げようとすると、小枝のようにぽろりと地面に落ちて、まっすぐのままピクリとも動かず、完全に「小枝」になりきっていた。まさに「迫真の演技」とはこのことかも〜(笑)。ネットで調べると、フタナミヒメトビシャクという種類のようだ。

 

身体を支える必要から2対の尾脚周辺は最も太くなっているのがわかる。尾脚自体も本来の脚よりも太くて立派だ。また身体には細かい無数のスジや一定の間隔で並ぶ5つの太いスジがあるのも見てとれる。



サンショウの小枝に擬態したフタナミヒメトビシャクの幼虫。この写真では、すぐに幼虫というのがわかるが、遠目に見ると確かに小枝にしか見えない。



こちらは本物の小枝。フタナミヒメトビシャクの幼虫がいたサンショウには、このような葉がない小枝が、知らないうちにいくつも生じていた。この中で擬態すれば余計に目立たなくなるのは明白だが、小枝の葉を食べたのは、フタナミヒメトビシャクの幼虫か、それとも別の幼虫か。もし葉を食べたのが、フタナミヒメトビシャクの幼虫だとしたら、景色の中に溶け込みやすいように自分と同じくらいの長さの小枝だけ選んで葉を食べて、擬態のために自分と似た小枝を故意に作っている…という仮説が成り立つかもしれない!?


 
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