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初めて飛来した?
ヒメクロサナエ

Lanthus fujiacus
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 今月上旬、夕方、実家の菜園に行くと春菊の葉に見慣れないトンボがとまっていた。以前、八幡湿原で撮影したヒロシマサナエの配色に似ているが、明らかにそれよりも小さい。とりあえず撮影してネットで調べてみる。その時は「ヒメサナエあたりかな?」と見当を付けたのだが、その後、自宅に帰って『日本のトンボ 』(文一総合出版)というトンボ図鑑で細かく調べると、ヒメクロサナエの♂であることが判明した。
 ヒメクロサナエは、サナエトンボ科のトンボで、本州・四国・九州に広く分布し、山野に棲息しているという。♂全長は38〜46mmなので、トンボとしては小さい方だ
 ついでに書いておくと、この本はトンボを同定する上で、かなり役立つ。種類ごとの細かい特徴が写真や図で示されており、その上、生態写真も充実。ムシ屋じゃなくても、一冊手元にほしい本だ。値段は約6000円と高価だが…。

 さて、それはともかく実家でこれまでヒメクロサナエを見たことは一度もない。初見のトンボだ。数年前にオオアオイトトンボという金属光沢をもつきれいなイトトンボの♂と♀が、庭と菜園の間の茂みにしばらく棲息していたが、これも実家初見のトンボだった。
 子供の頃、昆虫採集が大好きだったので、実家周辺の昆虫相にはある程度詳しかったが、その頃に両者を見た記憶も採集した記憶もない。採集したのに忘れてしまった可能性や来ていたのに気づかなかった可能性も高そうだが、棲息環境の好変化という可能性も十分にありそうだ。当時に比べれば実家周辺は宅地化が進んでいるが、一方でその周辺にある田畑が減り、おそらく今よりも多用されていたであろう農薬の使用も減って、意外と昆虫にとっては良好な環境になったのかもしれない。

 翌朝早く菜園に行くと、まだ春菊の上にいた。4月、まだ朝夕は肌寒い。気温が低いので、じっとしているのだろう。日が高くなってから見に行くと、その姿はなかった。

 

実家の菜園で見かけたヒメクロサナエの♂。ヒメサナエの♂尾部付属器は白いが、本種のそれは黒い。



横から見たところ。胸部側面の黒条は1本。



撮影後、PC上で画像を広げてみると、この個体は花粉のようなものを全身に浴びたようで、白い点々があちこちに点在。この写真だけは拡大気味になるので修正した(上2点は目立たないので未修正)。この写真を見ると、翅胸前面にはT字状の黄斑があることがわかる。これがヒメクロサナエの特徴のひとつ。


 
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