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稚内の湿原で見かけた
キマユツメナガセキレイ

Motacilla flava taivana
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 今年(2013年)7月下旬のある日、稚内市のメグマ沼畔に広がる湿原を散策した時のことだ。曇天の天気に加えて、平日ということあってか、ほかに歩いている人は誰もいない。隣接する稚内空港に着陸するプロペラ旅客機を眺めながら、木道をたどっていると、近くの木の先端にとまってしきりに鳴いている鳥がいるではないか。黄緑色がかった灰色と黄色の配色がなかなか美しい。これまでに見た記憶がない鳥だ。
 望遠ズームレンズを装着したカメラで追いながら観察すると、木の先端でしばらく鳴いたあと、少し離れた木に移動してまた鳴くことを繰り返している。かなり風が強い日だったので、移動する際には風で押し戻されるようになりながらも、それに逆らって懸命に飛ぶ姿が印象的だった。

 しばらく姿を追っていて、ふとあることに気づいた。どうも私を中心にして、その周囲を距離をおきながら回っているようにも感じたからだ。ははーん、つまり侵入者である私に自分のテリトリーを主張しているのではないのか。あーそうかもな〜。連続して鳴き続けるのも風にもめげずに飛ぶのも私のせいかも…と思うと急に申し訳ない気がしてきた。いや〜ゴメンね。君のテリトリーを荒らす気はさらさらないよ。
 
 野鳥にはまったく詳しくないので、帰宅して調べてセキレイ科ハクセキレイ属のツメナガセキレイ( M.flava )の亜種・キマユツメナガセキレイとわかった。図鑑を見ると、確かに「シベリアや樺太、北海道北部で繁殖する」とある。ツメナガセキレイは、夏は北海道、冬は沖縄にやってくる旅鳥らしいが、本種も北海道以南に飛来するのかどうかは不明。ひょっとすると稚内だから出会えたのかもしれない。




メグマ沼の湿原で出会ったキマユツメナガセキレイ。外見だけで雌雄の区別をするのは難しいようだ。名前は爪が長いから「ツメナガ」だと思うが、手持ちの複数の資料に目を通しても、由来について、はっきりと触れたものはひとつもなかった。ただこの写真を見ても確かに爪が長いように感じる。


 
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