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日高連峰の山奥で見かけた幼鳥
エゾアカゲラ

Dendrocopos major japonicus
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 日高連峰・神威岳の登山口になっている神威山荘に車で向かった時のこと。林道のカーブを曲がったすぐ目の前の路面上に一羽の鳥がいて、車に驚いて逃げる姿が見えた。よく見るとアカゲラのような模様。林道はその先で路肩崩壊のため通行止になっていて、本来の登山口にあたる神威山荘は800mほど先にある。仕方ないので神威山荘まで歩いて取材したあと、車に戻り、往路を戻ろうとした。先ほどの鳥を見かけた場所にさしかかると、また同じ鳥が路面上にいるではないか。少しバックして路肩に車を停め、車から降りてそっと近づきながら望遠レンズで撮影を試みた。
 人間に対してあまり警戒心をもっていないようで、結構近づいてもチラ見はするが、逃げようともせずに草むらで餌を探している。驚くことに最短1.5mほどの距離にまで接近できるほどだった。未舗装林道の路面上をチョンチョンと歩き回り、私が近くからカメラで連写しても警戒する素振りもない。一時的に付近の木に移動することもあったが、ほどなく同じ場所に戻ることを繰り返した。わずか10mほどの一角ばかり採食してまわっていたので、その場所がお気に入りだったようだ。

 アカゲラといえば、かつて上高地・ウェストン碑近くの散策路わきの木でドラミングしていたのを間近に目撃したことがある。私とほかのハイカー3人が2〜3mほどの距離から見ている目の前にも関わらず。しばらくして飛んでいってしまったが、アカゲラというのは意外と人間を警戒しないのだな、と驚いたことを思い出した。

 帰宅して調べてみると、アカゲラではなくエゾアカゲラという亜種で、しかも幼鳥ということが判明。図鑑には、背丈の低い草むらや舗装されていない道路などでも採食することがある、と書かれている。アカゲラの共通した性質なのか、あるいは幼鳥なので警戒センサーが少し鈍いのか、それともこの個体の性質なのかは不明だが、これほど近くまで接近しても逃げない野鳥は珍しいと思った。




前頭から頭頂にかけて赤いのは幼鳥の特徴。成鳥は後頭だけが赤い。雌雄は不明。それにしても白黒の模様といい、頭と下腹部の赤い色といい、緑の中で映える印象的な色使いである。幼鳥とはいえ、さすがキツツキのなかま。幹をしっかりつかめる鋭い爪にも注目。


未舗装林道の路面上で採食しているところ。


林道沿いの草むらもお気に入り。この写真はわずか2mほどの距離で撮影したもの。


 
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