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中国地方の限られた場所だけに生息するトンボ
ヒロシマサナエ

Davidius moiwanus sawanoi
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 ヒロシマサナエは、サナエトンボ科ダビドサナエ属のトンボで、モイワサナエの亜種にあたる。1973年に広島大学の故・澤野十蔵先生により八幡湿原で発見され、その後、県内の複数の湿地、さらに隣接する島根県や岡山県でも新たに産地が発見されている。
 発見者の澤野先生は、実は理学部ではなく医学部教授で、トンボは趣味として調べておられたそうだ。かつては「謎のトンボ」といわれ、宮島だけに棲息するミヤジマトンボ(環境省レッドリスト絶滅危惧IA類)の再発見者としても知られる。

 ヒロシマサナエは、何年か前のNHKの自然番組でも取り上げられ、一度見たいと思っていた。先日(2013年5月下旬)、八幡湿原を久しぶりに訪ねてみたところ、あっさり出会いを果たす。よく似たなかまもいるようだが、本種は胸側にある2つの黒い線のうち前の線が上縁までのびず、途切れているのが特徴。八幡湿原でこの特徴をもつトンボがいたら、ヒロシマサナエということになる。しかし、この時はオスとしか遭遇しなかった。

 数日後、八幡湿原を再訪。最初、尾崎谷で3時間粘ってわずか数回しか目の前に現れてくれなかったが、前回は一度も見なかった霧ヶ谷でやっとメスを見かける。実は霧ヶ谷でもあまりおらず、見かけてもなかなか撮影しやすい間近な草にとまってくれない。諦めかけて「もう帰ろうか」と入口に向けて木道を歩き始めたところ、後からぴゅ〜とヒロシマサナエのメスが飛んできて、すぐ横の草にとまった。まるで、「せっかく八幡に来たんじゃけぇ、写真撮ってから帰りんさいや」(広島弁。名前にも広島が付くのだからヒロシマサナエも広島弁なのに決まっている!! 笑)といってくれているように思えるほどの絶妙なタイミング&絶妙な位置。これはチャンスとばかりシャッターを切りまくった。そのメスは、私の熱意を感じたのか(?)、ちょっと飛んではすぐ近くにしばらくとまるということを繰り返し、かなり長い時間にわたって、私の前でその姿を披露してくれた。
 先日の「日記」では、「葉っぱにとまったカットは未使用のままとっておきたい」と書いたが、2度目の取材で結構たくさん撮影できたので使うことにした。





霧ヶ谷湿原でたっぷり、その姿を披露してくれたヒロシマサナエ(♀)。


尾崎谷湿原で3時間粘って撮影したヒロシマサナエ(♂)。


胸側にある2つの黒い線のうち前の線が上縁までのびず、途切れている



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山で出会った動物について話題や体験談を紹介します。ここでは昆虫類や両生類なども含めて動物全般を広く扱います。

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