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「はやにえ」をする鳥
モズ
Lanius bucephalus
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 住宅地や野山などで、よく目にする野鳥の一種。実家の周辺でも、過去にはよく見かたが、毎年見かけるというわけでもなく、ここ数年はほとんど飛来していない。下の写真は、昨年(2009年)の正月、久しぶりにやってきたモズの♀を撮影したもの。今年はまだ見ていないが、今日、庭のウメの枝に「モズのはやにえ」を見つけた。いつ突き刺したものかは不明だが、おそらく昨秋あたりのことではないかと思う。姿は見ていなくても実際には、時々やってきているのかもしれない。

 「モズのはやにえ」とは、枝先にカエルや昆虫など、捕獲した獲物を突き刺すモズの習性だが、何のために行うのか謎とされている。というのも突き刺したまま食べることもなく放置されていることが多いからだそうだ。冬季の食料を確保するためという説もあり、確かに後で食べることもあるようだが、本来はそれが目的であるにしても土に埋めて隠したドングリを忘れてしまうリスと同じく、そのうち獲物を突き刺したことを忘れてしまうのだろう。リスよりも記憶する能力が低いために放置される頻度が多くなって、何のための行動かわからないように見えるだけかもしれない。カエルや昆虫にしてみれば、まったく「殺され損」ということになるが、自然界において、このように理不尽なことは珍しくない。いや、人間の視点で見れば、一見理不尽なモズの習性も、おそらく「生態系の調節要素」のひとつとして機能しているのだろう。

 また冬季の食料確保のために雪に埋まらない高さに「はやにえ」をするので、それを見ることで積雪量を予想できるという説もある。しかし、その年に成鳥になった個体割合も多いだろうし、寿命もそれほど長くはないと思われるので、すべての個体が過去の経験から積雪量を判断している可能性は極めて低いといわざるを得ない。モズが、何らかの未知の気象因子をとらえているのか、それともタダの俗説にすきないのか。「モズのはやにえ」を多数記録し、積雪量との相関関係を調べてみたいものである。カマキリの卵塊でも同様の説があって、これについては調査した人もいる、という話を聞いたような気もするが、どういう結論だったか忘れてしまった。



ヤブツバキの林にやってきたモズ(♀)。♂には、黒い過眼線があるので、簡単に区別できる。枝にとまっている時、尾をまわす習性もある。


モズのはやにえ。ウメの枝先に突き刺されたバッタ。器用に腹の部分を突き刺している。



 
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