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本州日本海側の雪国に分布する
トウホクノウサギ
Lepus brachyurus angustidens
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 東北地方から中国地方にかけての日本海側に分布するノウサギの亜種。日本には、本州の太平洋側、四国、九州に分布するキュウシュウノウサギ、北海道に分布するエゾユキウサギのほか、佐渡にはサドノウサギ、隠岐にはオキノウサギもいる。ちなみに奄美大島と徳之島にいるアマミノクロウサギは、これらノウサギのなかまとは属が異なるようだ。
 ノウサギは、日本の野生動物の中では、比較的よく目にし、山岳地の車道で車に驚いて草むらに隠れるノウサギを見かける機会も多い。また、かつて鳥海山の中腹では、繁殖期の追いかけっこに忙しいトウホクノウサギのオスとメスに1日に何度も遭遇したこともあった。実家の周辺にもキュウシュウノウサギがいた(おそらく今もいる)ので、割と身近な野生動物の印象があるが、私の場合、登山中に出会った経験は意外と少ない。

 先日(2009年6月)、新潟−福島両県にまたがる浅草岳を登っていたときのこと。登山道が左右に分かれて、その間にある50センチ四方くらいの石や土からなる塊みたいな部分の隙間から、反対側の登山道に「ぼてっ」と何かが落ちる音がした。「大きなヒキガエルかな?」と思って、のぞき込むと、いきなりノウサギが飛び出して4〜5メートルほど先まで逃げて立ち止まった。慌ててカメラを構えて、数カット連写。こんな形でノウサギの写真が撮影できるとは思ってもみなかったが、しかしノウサギって人間と遭遇しても、なぜか草むらの奥深くまで一気に逃げ込まないような気がするのだが、これって何が理由なのだろう。様子を伺っているのか、何なのか知らないが、この個体のようにまずは少し逃げるんだけど数メートル先で一度、立ち止まることが多いように思う。要は、なるべく動きたくないってことだったりして(笑)。



浅草岳登山道で遭遇したトウホクノウサギ。耳をピンと立てているのは警戒している証拠だ。朝一番で、ほかの登山者はゼロ。安心して休んでいたら、突然、人間がやってきたんで、びっくりしたんだろうな。数カット撮影したら、また逃げ出したが、やはり数メートル先で一旦停止していた



 
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動物記