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ネコに似た鳴き声をする海鳥
ウミネコ

Larus crassirostris
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 ウミネコは全国の沿岸に棲むカモメ科の海鳥。かつて北海道をまわった時は、よく見かけた。特に青森〜函館や稚内〜利尻、礼文〜稚内航路では、フェリーが港を出港するとウミネコたちが一斉に飛び立ち、しばらく船と一緒に飛ぶ。お目当てはフェリーの乗客が与えるスナック菓子。観光客たちが菓子をもって手をのばすと、飛びながらうまくキャッチして行く。ウミネコたちがどこまでもついてくるので、「帰巣本能はどうした?」と余計な心配をしていたら、ある程度の距離まで来ると戻って行ってしまった。やはりエサ目当てについて来ても、ちゃんと距離や時間を計っていたのだろう。巣に戻れなくなるほど、エサに目がくらんでいないというわけか。
 それにしても、彼らのキャッチ技術に感心しつつも、本当にいいのかな、と疑問に思う。農産物に被害が及ぶサルのエサやりには、どこの地方でも神経質になっているが、一方この例のように海鳥に対する観光客のエサやり行動については、あまりとやかく言われない。だが、私たち人間ですら、スナック菓子を食べ過ぎると健康に害があるというのは、誰でも認識していることだ。観光客はおもしろがって菓子を与えているが、彼らにとってはその日限りでも、ウミネコたちはそれを毎日繰り返している。本来のエサとは、かなり養分バランスも違うはずで、偏った食事になっているのは間違いない。
 ウミネコも含めて野生動物はペットではない。だが、その区別がきちんとできない人が実に多いのである。例えば上高地でも、「マガモやオシドリにエサを与えないで」と上高地行きバスや上高地ビジターセンターが呼びかけているが、それでもエサを与えて喜んでいる人がいる。まるでペットにエサを与えるのと同じく優しいことでもしているつもりなのだろう。だが彼らの頭には、本来のエサとは違うものを人間から与え続けられることが、長い目で見てどういう結果を生む可能性があるか、といったことまで考えが及んでいないのはいうまでもない。しかも、同時に野生動物が生き抜く上で必要な「警戒心」までも奪っていることに気づいてもいないのだ。


 
北海道留萌市付近の海岸に並ぶウミネコ。みんな同じ方向を向いているのは、風上に向く本能でもあるからだろうか。確かに飛ぶときも向かい風の方が飛びやすいのは間違いないだろうけど(上左)。礼文島から稚内に戻るフェリーについて来るウミネコ(上右)。


礼文島から利尻島へ渡るフェリーにしばらく付いてくるウミネコ。


フェリー乗客が差し出すスナック菓子を上手にキャッチするウミネコ。礼文→利尻航路にて

 
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Nature
動物記