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クモのようだけどクモじゃない
ザトウムシ

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 登山途中、ザックをおろして休憩していると、ザックの上に足のやたらと長いクモがはい上がっていたことはないだろうか。山では割とよく出会うが、でも実はクモのように見えてクモじゃない。分類上は、クモ綱ダニ亜綱ザトウムシ目に属し、クモよりもむしろダニに近いという。ザックからそっとご退散頂くと、長い足をのばして軽やかに移動していく。昔は、ずっと足の長いクモだとばかり思っていたが、まさかダニの親類だったとは。

 先日、北アルプスの尾根で、雲が切れて展望が得られるのを待っていた時、近くの木に数匹のザトウムシが動いているのに気がついた。そのうち1匹が枝の先端まで達して、まだ枝がのびているかどうか足で探っていたところだった。そこで、そっと指を添えてみた。するとこのザトウムシ。まだ枝があったとばかりに簡単に指の上に移ってくるかと思えばさにあらず、「どうも枝の感触とは違うぞ。載っても大丈夫かな」という感じで、足先を私の指に当てたり離したりということを繰り返していた。結局、指の上に載ってきたのだが、すぐにUターンして元の枝に戻ってしまった。こんなちっぽけな虫だが、やはり何らかの「考え」のようなものがあるのだろう。もし何も考えていなければ、すぐに指の上に載ってきたはずだからだ。しばらく様子を確かめてから載ってきたということは、その間、何らかの判断がなされたに間違いない。ザトウムシも自分の身を守る生物学的な能力をもっているのだ。そんなことを考えさせられた。



長野県・乗鞍高原で見かけたザトウムシ。

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広島県安芸太田町・太田川支流域で見かけたザトウムシ。


 
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動物記