以前、あるテレビ番組で「魚を食べると頭がよくなるという説はホントかウソか」という二択問題が出題されていました。昔から青魚に含まれる不飽和脂肪酸・ドコサヘキサエン酸(DHA)が、脳の神経伝達機能にプラスに働く…みたいな説を聞く機会も多く、何年か前に「♪さかな、さかな〜、さかなを食べると頭、頭、頭がよくなる〜」という歌がヒットしたのも記憶に新しいところです。そのためか番組出演者も「ホント」の札を上げた人が多かったのですが、正解は「ウソ」とのことでした。
 医師が、ある研究結果を根拠に挙げて説明していましたが、私はそれを聞いて疑問に感じました。ちなみに私はDHAで頭がよくなる説に賛成も反対もしませんが、その研究結果を、どう解釈しようとも「魚を食べると頭がよくなるのはウソだ」と断言まではできないと思ったからです。

 その医師が根拠に挙げたのは富山医科薬科大学のグループが調べた研究結果でした。記憶頼りなので少し違うかもしれませんが、30人の被験者に3週間毎日、一定量のDHAを摂取させて、摂取前後の記憶能力と計算能力を比較したところ成績に違いはなかった。従ってDHAに有効性はなく、魚を食べると頭がよくなるのはウソである、という論法のようでした。
 私はこの研究の詳細を知りませんが、おそらく調査方法自体には問題はないでしょう。しかし、この研究では「3週間毎日、規定量のDHAを摂取しても記憶能力と計算能力に違いは生じない」ことがわかったに過ぎません。もしかするとほかの能力(例えば空間認識能力とか)なら違いが出たかもしれませんし、あるいは摂取期間を1年とか2年とか長くすれば記憶能力と計算能力にも違いが出たかもしれないからです(DHAの摂取によって脳の神経伝達機能に影響が出るまでにタイムラグがある可能性も否定できない)。つまり、この結果からは「DHAには、頭をよくする効果がない可能性がある」ということしかいえません。それを「ウソ」と断言してしまう、この医師には論理性に問題があります。
 テレビ番組で医師が国立大学の研究結果を根拠に断言すると、誰しもそれを信用すると思いますが、時にはこういうバイアスがかかることがあるという実態を知っておいても損はないでしょう。残念ながら似たようなことって時々あるんです。

 
              
 

Nature
これって正しい?

魚を食べると頭がよくなる
というのはウソ

雑記帳

第20話