最近、地域ごとに親しまれているB級グルメが人気ですよね。全国各地にさまざまな工夫があって、いかにも日本的といえるかもしれません。そんな話題のご当地B級グルメをわざわざ食べに行く人も多いのではないでしょうか。確かにおいしいから話題になっているのであり、満足することが多いだろうと思いますが、もしかすると実際に食べてみたら「思ったほどおいしくなかった」という場合もあるかもしれません。そして、ブログなどで感想を述べて「あれはおいしくないから、お勧めしない」と書けば、それを読んで「じゃあ、食べに行くのやめた」と同調する人も出てきそうです。
 ブログでそんな感想を書いた人。それを読んで同調した人。この両者の考え方には、どんなバイアスがかかっているといえるでしょうか。

 前者は、その地域のB級グルメ専門店のうち、自分が食べた店が、ほかの店と比較して同質もしくは平均的だろう、と何の根拠もないのに勝手に決めてかかっていることに問題があるといえます。もしかするとその店は、地域のB級グルメ専門店で一番マズい店だったかもしれません。一番マズい店なら、マズい可能性が高いのは当たり前の話であり、一番マズい店の感想をほかの店にも当てはめて、そのB級グルメ全体の評価をしてしまうのは、どう考えても無理がありますよね。
 次に後者は、前述したことに加えて、さらにわずか一人の感想に過ぎない点を見落としていることです。たとえ、地域で一番マズい店であったとしても、それを食べた9割の人は「おいしかった」という感想も持つかもしれません。つまり、この感想を述べた人は、残り1割の中に含まれる、全体で見れば「少数派」という可能性もあります。
 もちろん、一人でも否定的な意見があれば、マズい店に当たるリスクをとってまでして時間をかけて行きたくないとか、あるいはとりあえず食べに行くのは保留して、ほかの人の意見も聞いた上で判断しよう、ということなら、それはそれで理解できますけどね。

 我々日本人は、日本食のひとつ「そば」にも店によっておいしさにバラツキがあることをみんな知っていると思います。そば本来の風味を感じられる実にうまい「そば」もあれば、小麦粉に色が付いているだけとしか思えないマズい「そば」もあります。もし、そんなマズいそば屋で、初めて「そば」を食べた外国人が、「日本のそばって、おいしくない」と感想を述べていたら、「そばの感想をいうのなら、本物のそばを出す店で喰ってからにしてくれ」といいたくなりませんか? 逆に外国の食べ物についても、まったく同じことがいえます。 

 
  
 

Nature

「あるB級グルメを食べてみたら、おいしくなかったからお勧めしない」

これって正しい?
雑記帳

第12話