舞踏会のあと、王子は、ガラスの靴に合う女性を捜してくるように家来に命じます。家来は国中を探して、ようやくシンデレラを見つけ出しました。シンデレラは再び城に招かれ、二人はめでたく結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ…で話は終わるわけですが、ハッピーエンドで終わったのは運がよかっただけという可能性も考えられます。運が悪ければ「家来は国中を探しましたが、ガラスの靴に合う女性はいませんでした。王子は仕方なく諦めて、別の女性と結婚しましたとさ」というストーリーになった可能性もありました。
 なぜそういえるのか。それは、12時の鐘が鳴って慌てて城を出ようとしたシンデレラの片方の靴が、脱げてしまったところがポイントです。走ったら脱げてしまったということは、靴のサイズが少し大きかった可能性も考えられるのではないでしょうか。ピッタリでも慌てていれば脱げることもあるでしょうが、大きかったので脱げやすくなっていたのかもしれません。逆に靴が小さくて無理して足を押し込んでいたのあれば、脱げる可能性は極めて低いと考えられます。
 従って、ガラスの靴にピッタリの女性を捜してくるように命じただけでは、シンデレラが見落とされる可能性があるということです。もし私が王子なら、次のように家来に命じますね。

「ガラスの靴にピッタリか、もしくは歩行やダンスが支障なくできる範囲で靴がやや大きい場合も含めて、それに該当する女性全員を城に連れて来なさい。もちろん既婚者は除く」…と。

 こういう場合、対象者が極端に多くならない程度であれば、念のために捜索条件の間口を少し広げておく方が無難といえますが、シンデレラは、ガラスの靴を履いて城にやってきて、王子とダンスをしたのは間違いありませんから、靴が大きすぎて常に脱げやすい状態だった可能性は排除しても問題ないでしょう。

 でも夜の12時に魔法が解けるはずなのに、なぜガラスの靴だけは魔法が解けなかったのでしょうか。おそらく魔法使いは、ハンカチや靴など、舞踏会でうっかり落とす可能性があるものは、念のためにすべて実物を用意したのでしょう(魔法であればサイズの調整は簡単なはずですが、実物だったから調整ができず、少し大きめになったと考えることもできます)。なぜなら、万一、魔法で作ったものを城に落とした場合、魔法が解けてしまえば、シンデレラが貧しい身の上であることが王子にバレてしまうからです。リスクを徹底的に考慮した魔法使い、恐るべしです。

 ところで、どうして「ガラスの靴」なんでしょうね。昔は強化ガラスもなかったでしょうから、走ったら衝撃で確実に割れるような気もしますが…。つまり、こういう具合です。「シンデレラは、12時の鐘が鳴ったので、慌てて城を出ようとしましたが、ガラスの靴が割れて足下は大出血状態。しかもガラスの破片が足の裏に突き刺さり、痛くて歩けなくなり、とうとう王子の前で魔法が解けてしまいましたとさ」…みたいに(笑)。

 魔法使いは、きっと本物のガラスの靴を用意した上で、それが割れないように魔法をかけておいたんですね。つまり舞踏会の日の夜12時以降、ガラスの靴は、普通の強度に戻っていたが、試し履きに使っただけだったので問題はなかったというわけです。それなら矛盾はありません。

 
              
 

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シンデレラ考

第5話