浦島太郎の話は、もともとあった話にいろいろな話が加わり、ストーリーが変遷してきた経緯があることが主な原因なのでしょうが、不思議な設定になっています。そもそも浦島太郎の職業は漁師だったはずです。普段から魚をとって生計を立てていた漁師の浦島太郎がカメ一匹助けたからと言って、乙姫が感謝するというのもおかしな話です。太郎は、乙姫からご馳走でもてなされ、タイやヒラメの舞い踊りを見れたかもしれませんが、陸に戻ってみると知らないうちに何十年も経過しており、開けてはいけない玉手箱を開けてしまうという大失敗を犯したとはいえ、仮に玉手箱を開けずに若者のままだったとしても、母親の死に目にも会えず、自分の故郷なのに知らない人ばかり。これほど惨い仕打ちはありません。まさに乙姫は恩を仇で返したということになります。以上のことから推論すると、乙姫はカメを助けたお礼がしたかったとは到底思えません。おそらくこの話の真意は、次のようなことだったのではないでしょうか。


*真説・浦島太郎〜乙姫の謀略〜

 乙姫は、毎日のように自分の配下にあるタイやヒラメたちが浦島太郎によって釣り上げられている事実にとうとう怒り心頭に達し、乙姫に仕える有能なカメに太郎を竜宮城におびき寄せるように命令します。そこでカメは、まず太郎がどんな人物か、内偵することにしました。太郎の生活圏は海辺なので、カメにとっては何の苦労もありません。
 いろいろ調べていくうちに太郎は、心優しい人物ということがわかってきましたが、なかまたちのことを思うと、断じて許すわけにはいきません。ある日、カメは、ついに計画を実行に移します。浜で遊んでいた悪ガキたちを脅して、自分をいじめる芝居をするように強要したのです。
 そうこうしているうちに何も知らない太郎がやってきました。カメの合図で悪ガキたちはカメをいじめ始めますが、太郎の反応はまさに予想した通りでした。悪ガキたちからカメを助けてくれたのです。これはひとえに太郎の性格までも徹底的に調べていたカメの分析力の賜物といえるでしょう。カメは、優しい太郎を好意的に感じましたが、乙姫の命に背くわけにはいきません。その思いを振り切って、お礼がしたいと竜宮城に連れ帰りました。
 サディストの乙姫は、太郎が絶望するほどの陰湿な計画を考えていました。竜宮城は陸よりも時間の進み方が遅いことも知っており、カメを助けたお礼といって、たっぷり滞在させるだけで、とんでもないことが太郎の身に起こることがわかっていたのです。
 太郎は、生まれて初めて見る大ご馳走に加えて、いくら見ても飽きないタイやヒラメの舞い踊りを前に時間が経つのも忘れてしまいます。でも、その間に陸ではどんどん時間が経過していました。
 ふと我に返って、そろそろ家に帰りたいと申し出ますが、その度に乙姫に「まだ来たばかりじゃないですか」と引き留められます。さらに何日も経過して、ついに太郎は家に帰る決心をし、乙姫に伝えました。すると意外なことに今度は、あっさり認めてくれたのです。もうこれくらいなら時間的に十分という計算があったのでしょう。
 最後に乙姫は、「決して開けてはいけない」といって玉手箱を太郎に渡します。開けてはいけない箱をなぜくれるのか、ここで太郎は大いに疑問に感じるべきでしたが、酒を飲み過ぎたせいで頭がまったく働きません。差し出されるままに玉手箱を受け取り陸に帰りました。
 ところが陸に帰ってみると、もう何十年も経っていて、自分の家はなく、とっくの昔に母親は死んでいて、苔むした墓がぼつんとあるだけでした。パニックになった太郎は、開けてはならぬと念を押されたことを忘れて、うっかり玉手箱を開けてしまったのです。すると中から白い煙がもうもうと立ち昇り、あっという間に白い髭をはやしたおじいさんになってしまいました。ようやく太郎は、乙姫が決して善意で招待したわけではないことを悟りますが、時すでに遅しです。
 この物語の教訓は、浜で悪ガキたちがカメをいじめていても、助けてはいけない…あなたがたとえ漁師でなくても、それは乙姫の謀略かもしれないということです(笑)。 

 
              
 

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第4話

浦島太郎考