Nature

世の中のウソ目次へ

世の中のウソ


その7
マスコミのウソ(1)

 
マスコミの報道には、しばしば恣意的な手法が見られる。受取手によっては違うイメージを持つだろうことを想定した上で、敢えてセンセーショナルな取り上げ方をするようなことだ。もちろん事実とは異なる「完全なウソ」もよくあるのだが、今回はむしろ、そんな微妙な手法について書きたいと思う。


マスコミの手法@
発言の部分切り出し


 例えば、政治家のインタビューで、発言の一部分だけを取り上げるやり方。テレビ番組では時間が限られ、すべての発言を放送できないことも確かにあるだろうが、それによって発言の意味やニュアンスが変わってもお構いなし。むしろ内容がセンセーショナルになるように故意に前後の発言がカットされることが、しばしば見られる。
 政治家でなくとも誰にでもいえることだが、自分の考えや何かの経緯を他者に説明するとき、わかりやすく簡単にまとめるのは難しい。それが複雑な内容であれば特にそうだ。全体を通して説明を聞くのと、その中の一部分だけを聞くのとで意味やニュアンスが異なるのであれば、部分だけ切り出すのは、正確な報道とはいえない。
 昔、佐藤栄作・元総理が記者会見場から新聞記者を追い出し、テレビカメラだけに向かって記者会見を開いたことがあった。おそらく自分の発言を恣意的に変えて報道する新聞記者に不信感を抱いていたからだろうが、新聞と違ってテレビならそのまま放送されるから問題がないわけではない。この例を見ればわかるように、テレビでも似たようなことが起こりうる。


マスコミの手法A
発言の部分合体


 これも「その1」と似ているが、発言の中から部分的にふたつ以上の要素を切り出してきて合体させる手法。それぞれ違う文脈での発言であっても、それらを合体させると発言者がいわんとすることと意味やニュアンスが変わってくることがある。


マスコミの手法B
敢えて表面的な視点で報道する


 本来、マスコミは問題の本質を見極めて、正しい報道をしなければならないはずたが、表面的な視点で報道する方が、センセーショナルな場合は、敢えて本質を無視することがある。単に記者の能力不足で、問題の焦点を見極められていないだけ、ということもあるかもしれないが。


マスコミの手法C
問題を単純化させる


 確かにわかりやすく伝えることも大切であり、問題を単純化して報道するのも、やむを得ない場合もある。しかし、単純化するのであれば事実とあまりズレないように注意しなければならないはずだが、現実は、センセーショナルになるように恣意的に「単純化」されていることがよくある。



 今後は、マスコミの報道にそういう点が見られないか、よく注意してみよう。漠然と報道を聞いているだけではわからなくても、注意深く観察すると、そういう手法がしばしば使われていることに気づくだろう。


続けて、その8「マスコミのウソ(2)」を読む→こちら