File No.0061

父の介護で作ったもの(4)
首の傾き矯正器




 小脳出血で動きが悪くなった父だが、退院してから小脳のダメージがこんなところにも現れるのかと予想外だったことがある。ひとつは腎臓で、小脳と腎臓はあまり関係なさそうに見えるが、小脳出血した患者は腎臓に問題が出ることはよくあることらしい。また椅子に座っても、長時間、姿勢を維持できにくくなることも初めて知った。父の場合、日中は居間のソファーに座って過ごしたが、時間とともに首が左右、どちらかに傾いて、やがて姿勢にも影響し、自分で修正することができなかった。その傾きたるや、健常な人では絶対にならないほどに傾いてしまうのだ。またソファーから次第にズレ落ちることもよくあった。まったく問題ない日もあったが、ズレ落ちた時は、後ろから抱き起こす必要があった。

 首の傾きは、何か支えるものがあれば解決するのではないかと考え、椅子に取り付けられる矯正器を自作した。またリクライニングできるソファはあまりよくないので、背中と脚が直角になる「正しい姿勢」を維持させるようにとの訪問理学療法士の助言に従って、ソファーに新たな直角となる背板を取り付け、それに付随させる形で矯正器を取り付けられるようにした。

 結論をいうと、これはまあまあ正解だった。依然として「ソファーからのズレ落ち」は時々発生したが、矯正器のお陰で首が傾かなくなった。 「ソファーからのズレ落ち」については、後日、別の方法で改善させた。簡単に説明すると理学療法士推奨の「背板と座面が直角になった椅子」を諦め(理学療法上はベストかもしれないが、姿勢よく座り続けるのも父がしんどそうに見えたこともあり)、ズレ落ちにくいように座面を奥よりも手前側を数センチ分ほど高くしてみた。加えて両足を載せるオットマンも自作。床に置くだけではオットマンもズレるので、ソファーとセットで固定てきるようにした(写真は「肘掛け置きテーブル 再改良編」にあり)。これにより「ソファーからのズレ落ち」もあまりしなくなった。

 首の傾き矯正器は、常用するわけではなく、父の首が傾いた時だけ使用するわけだが、セッティングにやや手間がかかり、しかも日によって傾く方向が逆になることもあり、そのたびにナットをまわして締め直すのも面倒。しかも「背板と座面が直角になった椅子」を諦めたこともあり、全体を見直し、背板はそのまま利用して元々のソファーの背板に重ねて、その隙間に矯正器につながる板を挟み込むように後日、改良した(写真なし)。矯正器の根元に板を取り付け、一方の面にゴム板を貼り付ける。矯正器の位置を変えたい時は、父を前かがみにさせて、矯正器を右から左、あるいは左から右へと挟み込む位置を変えるだけでいい。挟むだけなので、取り付け取り外しも、位置の変更も簡単にすむ。

 介護用品レンタル会社の担当者が、うちに来られた際。矯正器等、私が父のためにいろいろ自作したものをご覧になって、「ここまでされる家は初めてです。大変参考になります」と仰っておられた。半分はリップサービスかもしれないが、半分は本音だろう。



矯正器の上部には、父の首を支える折り畳み式の支持棒がある。寸切ボルトとナットで固定するが、位置を変更できるように穴を複数開けておいた。写真にはないが、支持棒に母が作った専用のクッションを取り付ければ、長時間の使用でも問題ない



立ち上がらせたり、逆に座らせるときに支持棒が邪魔になると予想されたので、折りたためるようにした



このソファーは、両親がブラジル滞在中にブラジルの家具メーカーにオーダーメイドで作ってもらった、いくつかの家具のひとつ。彫刻もすべて手彫りのソファーセットで、別に皮張りのクッションが付属していたが、父が座りやすいように、このソファーだけクッションを外し座布団にし、さらに自作の背板を取り付けた。この写真は改良前なので背板が直角に配置されている。いくら理学療法上、ベストであっても、さすがにこれはきついだろうと思って、結局、直角背板はやめた




矯正器の支柱の固定方法。支柱のボルト穴は一方に切れ込みがあり、背板の寸切ボルトに挟んでナットで固定するようにしたが、これでも取り付け取り外しは結構めんどう。なので本文に書いたように「矯正器の板を背板どうしで挟み込む」方式に変更した













 

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